2016.02.29
東京マラソン2016の抽選倍率は、過去最高の11.3倍。走りたくても走れない人が大半の中、この厳しい競争率をするりと乗り越え、今年で3年連続、同大会に出場を果たしたラッキーな男性がいる。
今回は、ランナー歴6年、株式会社ディードライブ代表取締役社長の池崎大輔氏をゲストに迎え、彼だからこそ語れる東京マラソンの魅力や醍醐味、みごと完走した今年の完走などたっぷりお話を伺ってきた。
──今年で、東京マラソン3年連続出場だそうですね。かなりラッキーなのでは?
偶然ラッキーが重なったんです。「ONE TOKYO」のプレミアム会員のみ、6月に先行エントリーがあるんですね。その抽選に漏れると自動的に8月の一般抽選の本選にエントリーされます。私の場合、1回目は先行エントリーで当選、2回目、3回目は、やはりプレミアム会員のみ実施される11月末の「二次選考」の抽選で当選しました。
これまでの経験から(個人的推測ですが)ひとつ思っているのは、僕を含めてプレミアム会員になって、CDやDVD、フレームなどのグッズをたくさん買い物している分、神様のご加護を得られたのではないかなと。
──グッズとは何のこと?
大会終了後、東京マラソンのウェブサイト上で、ゼッケン番号とパスワードを入れると、自分が写っている写真を閲覧できるんですが、1枚ずつ買うと確か2,160円くらい。一式CDで買うと正確な金額はちょっと忘れましたが、8,000~10,000円ほど。だからこっちの方をみんな買うんですよ。DVDは自分が走っているムービーで、約2万円。あとは記録証とメダルとゼッケンが入るフレームが3万2,000円。コレ、毎年買おうかどうか迷いますが、選ばれる確率を上げるためにも投資だと思って買っています(笑)。ちなみにポスターは遠目には分からないですけど、出場ランナー3万6千人みんなの名前が入ってるんです。やっぱり買っちゃいますよね(笑)。
──東京マラソンに出場しようと思ったきっかけは、何だったのですか?
だいたい平均して週3回、多い時は5回くらい走っていると、今、自分がどれくらいの位置にいるのかが知りたくなってくるんですよね。力試しがしたい、だから大会に出るという感じです。
──スタート地点の走る順番って、あらかじめ決まっているのですか?
はい、決まっています。事前に自己申告でタイムを申請します。例えば、3時間40分ならDエリアとか。A~Kまであって、リクレン(陸上競技連盟)に登録すると、一番前のAのエリアからスタートできます。ただし先頭を切って走るのは、2時間6~7分台の世界のトップランナーたちですね。彼らは、50メートル9秒くらいのスピードで走っていて、折り返し地点ですれ違うこともあります。
──給水、給食について教えてください。
東京マラソンの給水所は、わりとマメに5キロごとくらいにあるのかな。100メートルくらいの長い距離で取っていて、だいたい手前半分がスポーツドリンク、半分から向こうが水。水は本当にありがたいです。手持ちのチューブ入りのゼリーを飲んだ時とか、手がベタベタになるので、飲むのとは別に洗うのにも使います。沿道の飲食店の方たちが、みそ汁やおにぎりを提供してくれていて、これもありがたいことなんですけど、走っている時は僕は食べる気にはなれないですね。大会当日は朝も食べずに、極力カラカラの状態で行って、走り始めてから給水するようにしています。
──変わった格好をして走る人をよく見かけます。
そうですね。十字架を背負ったキリスト、ウェディングドレスとタキシード姿のカップル、ウォーリー、スーツ姿のサラリーマンなど…色んな方が走っています。「おい、富士山!」とか、「ガンバレ、原始人!」など、外見的な特徴や名前で呼ばれる声援が多いですね。昨年から規制が入って、70センチ以上のものは持ち込めなくなりましたが、折りたたみ式や空気を入れて膨らませる被り物など、趣向を凝らしている人はいますよ。あと、名物といえば、9キロ、18キロ、27キロだったかな、おもりらしきものを背負って走る自衛官もいます。
──沿道の声援って、走っていてもちゃんと耳に入ってくるものなのですか?
僕は、聴覚、視覚、全部入ってきますね。いつも東京マラソンの実況中継を聞きながら走るんですが、片方外すと、「ガンバレ!」 「ガンバってください!」の声援の嵐です。本当にありがたいんですけど、「これ以上ないくらい、今、俺、ガンバってるんすよ!」って、言い返したくなることがあります(笑)。
友人たちお手製の応援グッズ
──では、何と言われたら嬉しいですか?
そうですね…女性の集団から、「カッコイイ!」って言われたら、一番モチベーションが上がるでしょうね(笑)。それが一番励みになると思います。女性ランナーの場合はどうなんだろう?分からないですけど、走っている姿やウェアなどを含めて、美しいということを言われたら、嬉しいのかな。僕の友人に、応援の達人がいるんですが、彼いわく、泉岳寺、東日本橋、豊洲が目的のランナーを見送って、また電車で先回りして、出来るだけ数多く声援を送れるポイントだそうです。手作りのボードを掲げて、毎年3回応援をくれますね。吹奏楽団や中国雑技団、あとはダンスなど、沿道の応援にも色んな人がいます。
──東京マラソンは、ボランティアの方も多いと聞きます。
僕が聞いた話だと、ボランティアだけで、1万人くらいだとか。リーダーがいて、給水やスタート後のゴミ拾いなど、役割ごとに班に分かれているそうです。ランナーの抽選に漏れて、ボランティアに応募する方が多いそうで、走る人たちのことをよく分かってやってくださっているし、大会前のイベントでもすごく活躍されていますね。ゴールした時、メダルとバスタオルを掛けてくれるのも彼らなのですが、なぜか毎年、そこでポカリスエットとバナナとみかんを渡されるんです(笑)。
東京マラソン2015、ゴールの瞬間
──2016年東京マラソンも完走されたとのこと、おめでとうございます!いかがでしたか?
ありがとうございます。今大会は、圧倒的な準備不足に輪をかけて、好天候による気温上昇もあり、非常に厳しい一本でした。タイムはこの舞台3度目にして、自己ワーストの4:27:01。でも、これが今の実力だと納得しています。途中で失速したこともあり、一転して、沿道やエイドを楽しむ方に回ってみました。
昨年までは全く気付いてなかったのですが、給食にはバナナやトマトもあり、トマトを1ついただきました。コース後半の沿道には、コーラや冷却スプレーを差し出してくれる方々がとても多く、こちらも1回ずつお世話になりましたね。ランナーの過酷な状況や心境を察してくれている方々が多かったように思います。
ボランティアの皆さんすべてにおいて、「ランナーに対する労い意識」が徹底されていて、スタート前からゴール後まで、どこまでも癒されました。改めて非常に素晴らしいなと心を打たれました。
──ランナーの池崎さんにとって、東京マラソンが特別な理由とは何でしょうか?
世界のトップランナーが来るような大きな大会で、一緒に走らせてもらえることですね。日本では、やっぱり一番だと思います。あとは、そんな一大ビッグイベントに歩いていけることでしょうか(笑)。自宅から、スタート地点の新宿都庁までは4キロほどなので、ウォーミング・アップを兼ねて、いつも歩いていくんです。着替えだけ、カバンに詰め込んで。
──大会終了後の帰りも、歩くのですか?
いえいえ、帰りは電車ですね。一緒に走った友人・知人らと新橋あたりで合流して、飲みにいきます。チョット一杯のつもりが、いつも長引くんですけど(笑)。
──えっ!42.195キロを走ったあとに、まだ飲む気力があるんですか?
はい、あります(笑)。何のために走っているかって、飲むために走ってるんです。やっぱり、“酒と風呂”は、究極のニンジンです。大会が大きければ大きいほど、走り終えた後のニンジンの美味いこと。これだから、走るのはやめられませんね!