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2016.02.26

vol.9 TOKYO NUDE
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最近のトレンドといえば、ノームコア。ジェンダーレス(男女差なし)、エフォートレスといった要素も入った超薄味スタイルだ。そんな超シンプルトレンドの昨今、デザインだけで服は売れない!困った!ということで、企業がスタイリストや有名タレントをディレクターに起用するケースが増えている。話題性もあって華やかなスタイリスト&タレントブランドだが、即撃沈した残念なブランドも多いというのが現実。何が売れて何が売れなかったのか、ファッションブランドの勝ち組負け組を振り返ってみよう。

1.スタイリストブランドの当たり、ハズレ


今一番売れてる!と騒がれているのはスタイリスト中山まりこさんのブランド、「MADISON BLUE(マディソン ブルー)」。質のよい大人のためのカジュアル服で、シャツやジャケットのシルエットに定評のあるブランドだ。過度なデザインを排したオーセンティックな服は飾り気がなくシンプルなのに、着ると女性らしさが引き立つハンサムな服だ。適度な抜け感がなんとも都会的で、着た日には必ず褒められる(筆者調べ)。展示会ではスタイリスト、エディター、モデルなど業界人でごった返していて、ほぼ全員が個人注文している。アクセスの悪い目黒・油面にあるショップには連日お金持ち風マダムが集い、客単価20万円以上という驚異の売上げを誇る。

次に注目なのがスタイリスト佐々木敬子さんが手掛ける「MYLAN(マイラン)」だ。道端ジェシカ、梨花、宮沢りえ、紗栄子などお洒落有名人のスタイリングを手掛ける彼女の服は、ピンクやターコイズといった甘く色鮮やかなカラーが特徴。Life is journeyがテーマで、ほんのりエスニックやハワイアンを感じさせる着心地の良いワンピースやブラウスなど女度がアップしそうなアイテムが揃う。大人の乙女心をくすぐるキラキラした世界観はファッションセレブたちのSNSで紹介されまくり、キャッチーで話題に欠かない存在だ。「The Virgnia (ザ ヴァージニア)」も手掛けている佐々木さん、さすがお手のもの。

そのほか、百々千晴さんによる「GINGER ALE(ジンジャーエール)」、大森伃佑子さんの着物ブランド「DOUBLE MAISON(ドゥーブルメゾン)」も奮闘中だ。
ファッションブランド以外では、編集長に大草直子さんを招いて創刊したウェブマガジン「ミモレ」もプライベート情報や友達業界人のブログも満載で元気そうだ。このように、レディススタイリストを起用したブランドには成功例が多い。

一方、メンズスタイリストを起用したブランドは軒並み苦戦しているようだ。

昨年秋にオープンしたクラフト&カルチャーショップ「CPCM(シーピーシーエム)」をディレクションしたのは熊谷隆志さん。原宿に出現した928㎡の巨大な店内にはあちこちにサボテンなどの植物、巨大なテント、槍や壷などアメリカの民芸品、古着やカジュアル服が並び、水牛の剥製やアンティークの暖炉などインテリアも見どころ満載。カリフォルニアに住むお金持ちヒッピーの自邸といった雰囲気だ。
熊谷さんはオープンに際して「ただ好きなものを並べた。駒沢の自分の店「WIND AND SEA(ウィンダンシー)」で出来なかったことを実現した」と様々なインタビューで答えている。超個人的な趣味で店作りをしたわけだ。初回買い付け金額は5億円!社長(株式会社パル)が熊谷さんに惚れ込み、独断で出店となったため社内では大ブーイングだとか。「CPCM」の店舗は家賃が少なくとも1ヶ月1,500万。1日500万売れれば家賃だけはペイできるが、2フロア合わせて販売スタッフ6〜7名の人件費や買い付け金額5億を考えると回収の見込みは……悪夢だ。

そのほか、二村毅さんがファッション分野のディレクションをする「CIBONE(シボネ)」もファッションを増やしてから不評ですっかり影を潜め、小沢宏さんが立ち上げた(現在は去っている)「Drawing Numbers(ドローイングナンバーズ)」も不調だ。その中では野口強さんが密かにディレクションしている「Highland Park(ハイランドパーク)」は70年代レトロアウトドアの雰囲気が好評でブランド4年目に入った今も人気だ。大阪出身、さすがの商売マインドだ。

成功例が目立った女性スタイリストは、極めて現実的。皆ほとんど家庭を持ち、子育て真っただ中なので、手料理や子どもなど日常生活の素敵な写真をインスタ投稿しプライベートも話題だ。自分の持ち味を大切にしながら「周りの人たちが実際に着られるもの、愛されるもの」を大切にディレクションしているように感じる。それに反して男性スタイリストが目指すのは、「自分の好きなことを極めること」。個人の世界観にこだわりすぎて、マーケティングマインドに欠けている。男性諸君!自分の趣味はスタイリング仕事とプライベートにとどめて、店作りはも少しビジネスマインドをスキルアップさせてからにしましょう。

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