2017.12.07
藤井フィーバー、ひふみん。流行語候補に2語もノミネートされるほど、今年の将棋界はアツかった。その将棋と並び称されるものに囲碁があるが、残念なことに、こちらはどうしても地味さが付きまとってしまう。そもそも囲碁と将棋は似て非なるもので、陣地を取り合う囲碁に対して、将棋は相手の「王将」を取り合うゲーム。この2つを比べること自体ナンセンスで、きのこの山とたけのこの里のように本質が異なるものなのだ。
一般の女性には「おじいちゃんの趣味」と見える囲碁だが、私の半径50mの人たちに囲碁は人気上昇中。海外起業家や経営者に囲碁を嗜む人が多く(ビル・ゲイツは有段者!)、グローバルコミュニケーションとして注目されている囲碁。大人の習い事としてこれほど相応しいものはない、と断言してみる。
碁会所ってなんだ?
さて、どこで囲碁を学ぼう。囲碁の聖地である日本棋院で学ぶことも考えてみたが、長く通い続けるには近所であることが望ましい。よく通る道に「碁」と書かれたシブい看板がある。それは皮肉にも「餃子の王将」の2階を指し示していた。どうやらここは、席料を支払い、有料で囲碁を打つことができる「碁会所」と呼ばれる場所らしい。ホームページを見ていたら、毎週木曜日に初級者対象の教室を開設しているとのことなので、学ぶ場所はここに決定した。
看板だけでなく、階段を上がっても見事なシブさ。下北沢囲碁会館は46年の歴史をもつ老舗碁会所で、雑多な個性が寄り集まる下北沢の街にもしっくり馴染んでいる。窓越しに見えるのは、下北沢のダンディーなおじさまたち。胸が高鳴るのを抑えつつ、人生初の碁会所に乗り込んでみた。笑顔で出迎えてくれたのは、席亭(碁会所の主人のこと)の江澤俊彦さんだ。
「いらっしゃい!」とコーヒー片手にエプロン姿で現れた江澤さん。え?ここは囲碁を打つところでは?
「碁会所は囲碁サロンとも呼ばれていて、優雅な空間の中でおいしい飲み物を味わいながら囲碁が楽しめる場所なんです。席亭である私の役目はおいしいコーヒーを淹れることと、囲碁レベルの近い人同士をマッチングすることです」
コーヒーの香りが立ち込める店内は完全禁煙。明るく清潔感があり、女性にも入りやすい雰囲気。奥には書棚があり、囲碁にまつわる書籍を無料で貸し出ししてくれる。早速、意気揚々と初級者教室に参戦しようとするものの、ルールもあやふやな私は、まず江澤さんの手ほどきを受けることに。
「囲碁には、棋力を表すための段級位があります。30級からスタートして1級まで昇ったら、次は段になります。初級者対象クラスに参加するには、最低シングル級(9級以降)にならないとね」