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2014.12.12

vol.3 The Movement-TOKYO 2014-2015
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昨今、東京にはありとあらゆる食ブームが介在している。オーガニックやマクロビなどのヘルシー志向もあれば、B級グルメやジロリアン的なファットフード路線もあり、パンケーキやらグルメポップコーンやら、もはや何でもござれの食ブーム戦国時代だ。
かつての食ブームといえば、ワンレンボディコンのお姉ちゃんが決まってイタ飯をせがんだように、国民的一大トレンドの規模を博していた。この現象を、料理ライターの畑中三応子さんの著書(※)では、ファッションのように食を消費する「ファッションフード」と語っているが、近年ではファッション同様に、多様化してきている。さらに、その増殖する食ブームはファッション的志向性とさらにリンクし、そこに群がる女性たちは暗黙のうちに画一化しているのだ。

“ファッションフード”って?
例えば、海外セレブに憧れる女性たちは、モード雑誌を片手に雑穀やスーパーフードなど最新のヘルシーフードを買い漁る。読者モデルに憧れる女性たちは、毎朝手作りのスムージーをSNSにアップし、休日ともなればパンケーキ屋の行列にせっせと並ぶ(これももちろんもアップ)。手抜きファッションが常習化しだしたアラサー女性は、もはや女子の巣窟となった赤ちょうちんの立ち飲み屋で、モツ焼きにかぶりつきハイボールで流し込む。ファストファッション育ちのネオギャルたちは、生まれながらに大好物のファストフードで空腹を満たす、などなど。さらには、そんな多様化時代を潜り抜けてきた女性たちは、ハイブランドと安物を“こなれスタイル”にコーデして、昼はマクロビ、夜は肉食といった具合に、うまくトレンドをこなしたりもしている。

元来、男性は決まった店の決まった味を求め、決まった服を毎日着る傾向の生き物で、世の中のトレンドの多くは女性たちが牽引してきた。中でも流行りものが大好物の日本は、知らず知らずのうちに進化を遂げ、ファッション大国、グルメ大国へと変貌している。しかし、ファッションや食がこれだけトレンド飽和状態の時代となった今こそ、もっと“自分好み”を極めるべきではないだろうか。メディアナイズされたトレンドファッションに身を包み、群れを成して行列に並ぶ顔ぶれに、果たして東京らしさはあるだろうか。

“500円の豆腐”から始める、リアルフードライフ
東京には本物がたくさん存在する。それは、伝統的なものも、最先端のものもひっくるめて、目利きが問われるということ。食であれ、ファッションであれ、人であれ、これだけ本質を極めたものと出会える街はそうそうない。
私が上京して間もない学生の頃、とあるグルメな大人にこう言われた。「多少貧乏をしていても、月に一度は1丁500円の豆腐を買って食べなさい」と。私の育った田舎ではそんな高級豆腐にはそうそうお目にかかれなかったので、まず値段に驚かされた。しかし、その味には、同じ500円でも牛丼やハンバーガーとは比べ物にならない豊かさがあった。今思い返すとあの言葉は、収入や社会的階級に関係なく、本当の味を知っている人間であれ。そして、この先どんな高級料理と出会っても、自分の味覚で判断できるようになって欲しい、という意味だったのではないかと思う。

ファッションやライフスタイルも同じく。流行に踊らされない、本当の自分にフィットしたスタイルを見つけることこそが、東京を謳歌する術だ。最近、目利きをフィーチャーしている雑誌や特集がちらほら出始めている。これは、本物志向への回帰ではないか。それとも、これもブームの一環なのだろうか。
(Text : Yumi Sato
(Illustration: 大沢 純子)

※畑中三応子 著『ファッションフード、あります。: はやりの食べ物クロニクル1970-2010』(紀伊国屋書店)

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