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2014.11.07

vol.3 The Movement-TOKYO 2014-2015
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巷で話題の食ブームのお話。アメリカ由来のステーキハウスや肉のみならずスイーツ系のお店も続々と上陸しているなか、今回は、食のムーヴメントのひとつ「肉」について一断面を切り取ってみたいと思う。
その中で注目したいのが、「熟成(エイジング)肉」。熟成のやり方はいくつかあるそうだが、欧米で発展した伝統のドライエイジングが今のブーム。一定の温度を保つ冷蔵庫で肉を寝かせることで、肉が持つ酵素によってたんぱく質が分解されうまみ成分のアミノ酸へと変化するという。アミノ酸が増えることで、うまみに加えて柔からさも増すというから、美味しいモノ好き、流行モノ好きの人が注目するのも納得だ。
が、しかし、何十日間も肉を熟成させるわけ(※1)だから「腐ってるんじゃないの?」「新鮮な肉より美味しいのか?」と疑問を持つ人も少なくないはず。やや乱立気味の東京に多くある熟成肉をキャッチーに謳う店はホントのところ美味しいの?とかすかな疑問を持つ編集部は、自分の舌を信じることはもちろんなんだけど、プロの意見も聞いてみた。

今回取材を申し込んだのは、創業61年の精肉問屋『(有)門馬商店』の副社長、松尾勇雄さん。「熟成(エイジング)肉は、まだ私どもの地方では1店舗もなく、エイジングのノウハウや技術といったところまで情報がないので間違いがあったら申し訳ありません」という慎ましい一言からはじまった……興味深いトーク内容は、一読の価値あり。

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──熟成とうまみの関係について
そもそも、肉も魚も熟成させた方がうまみは出ますが、その肉の種類や製法、加工過程で、うまみの出方やピークはそれぞれ異なります。例えば、弊社でオリジナル製造・卸している「味付け牛タン」は、生のタンを仕入れてから1週間ほど熟成(エイジングとは異なる製法)させたものを、各飲食店さんへご提供しています。これが、一番美味しい熟成期間で、それ以上長く寝かせてしまうと味がどんどん劣化し、牛肉の独特の臭いが強くなってしまいます。

──熟成肉にビーフが使われる理由
牛肉が多く使われている理由としては、牛肉が肉の中で最も菌が少なく、劣化のスピードが遅いため、熟成に向いているのではないかと考えます。逆に、最も菌が多いのは鶏肉で、次いで豚肉。菌が多い種類の肉ほど、鮮度の高いものが美味しいという事になります。私が思う一番美味しい肉の期間は、牛は解体してから1週間、豚は3~4日、鶏はすぐ! 鶏に限っては、野菜と同じで採れたてが一番です。

──肉のプロは熟成肉ブームをどう思うか
我々のような肉問屋の者から言わせていただくと、熟成(エイジング)したものも美味しいのでしょうが、市場でセリにかかり、そこから何日かで売り切らなくてはならない(消費期限のようなもの)というルールがありますので、個人的には、何ヶ月も寝てしまった肉を食したいとは思いません。もちろん、東京でエイジングビーフを食べに行ってみましたが、肉本来の味を知るプロとしては、正直美味しいとは感じませんでした(笑)。東京という土地柄、競争に勝ち残っていくために、常に新しい切り口の飲食店が次から次へと出てきますが、個人的に熟成肉は、東京限定の局地的なブームのような気がしています。

「何ヶ月も寝てしまった肉を食したいとは思いません」とは、まさに、肉のプロ、肉問屋らしいと言えるリアルな声。もちろん、あくまで個人の意見であり、食の好みや何を選ぶかは人それぞれ。
自身としては、なるべく新鮮なモノを食べたいのが本音だが、「トレンドフードを食すのも勉強と経験だ!」 と、いくつかの人気店でエイジングビーフを食し、最初は「こんなに赤くて(レアで)大丈夫なのか?」と半信半疑だったけれど、結果的には、岩塩とコショウのシンプルな味付けでも十分美味しく、180gをぺろりとたいらげてしまった(笑)。

ムーヴメントの『熟成(エイジング)肉』。A5ランクの肉を謳う焼き肉やチェーン店も増えている混沌とした肉事情……、
これからの動向を担うのは、舌で確かめることができるアナタの意見次第かも!?

(Photo&Text:M.eat)

※1 熟成の期間は、手法や店ごとに異なるため一例として

『(有)門馬商店』
宮城県仙台市にある、地元で人気の精肉問屋。創業61年。

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