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2015.08.17


vol.7 TOKYO COST PERFORMANCE
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それなりの料理を手際良く作れる男を悪く言う女は、
この世にいない


「今からパーティに行かない? 男女半々で80人くらい集まってるらしいよ」

仕事が終わってさっさと帰ろうとすると、エレベーター前で同僚たちから声を掛けられる。訊けば、今夜は港区某所のデザイナーズマンションに在住のIT系若手経営者宅でパーティがあるという。
「リビングが超広くて、天井も高くて、窓からは東京タワーやレインボーブリッジが見える」らしい。まだ若く疲れを知らなかったので、異性との出逢いの欲望/期待と、そんな暮らしをしている奴に対する嫉妬/羨望、そんな気持ちを半分ずつ胸に抱きながら現場へと向かった。

90年代後半~00年代前半の東京には、ちょっとした社会人パーティブームが起こっていた。レストラン、クラブ、ホテルのスイートルームやプールサイド、高層マンションのパーティルーム……考えられるあらゆる場所で毎週末のように繰り広げられていたと思う。見栄えのいい部屋も当然そのリストに加えられた。

ことの発端はネットベンチャーの隆盛やネットバブル景気だった。若くしてリッチになることがもはや夢でなくなった時代の到来。大金を手にした20~30代の連中が高額家賃のマンションや高価な車や時計や服を次々と揃え始めた時期だ。富を形にしたら他人に見せて自慢したくなるし、せっかくならそれをエサにしてひと儲け企てたいと思うのは、未熟な人間の悲しい性だ。

その夜、この目で見たのは、早すぎる成功に酔いしれる者とそこに必死に追いつこうとする者、そんな男たちを値踏みする派手な雰囲気の女たち、そして噂の世界を目前にしてやや緊張気味の初心者たち。
眺望もよく、音楽もあり、酒が注がれる。知り合いもいて、会話も弾み、名刺が差し出される。「こんな世界があったのか。来て勉強になったなぁ」と思いたかった。しかし、それを根底から覆してしまうほど残念すぎることがあった。

「えっ、これだけ!? ショボすぎだろ〜」と思わず声に出したかもしれない。湿ったミニサイズのサンドイッチやスナック菓子が楕円形の銀色のトレイに乗せられた“あの光景”だ。女子中学生のお泊まり会やキッズのお誕生会でも、今時こんなものは並ばない。“オン・ザ・リッツ”なんて実際に見たのは子供の時以来だ。

成功者でもなく、別にそうなりたいとも思わない者にとって、営利目的バレバレな1万円もの会費を払って、運命的ではない女の子の連絡先を1つや2つ聞き出しただけでは余りにもコスパが悪すぎる。どこへ行ってもこんなパーティばかりだった。これだけは言える。若くして大金を手にする連中ほど、食には疎く味覚はガキのままだ。

それと同じ頃、世田谷区某所のマンションでの集まりに呼ばれる機会があった。家主は50代のバツイチサラリーマンで、酒と音楽好きということもあり、部屋にはバーカウンターやDJブースやプロジェクター用のスクリーンがあった。集まったのはその人の同年代の遊び仲間と綺麗な若い女性が数名。

“年上のオッサンと同じ空間で遊ぶ”ことに慣れていなかったので戸惑いもあったが、そんな心配を解してくれたのがオッサンたちの手料理だった。これが美味くて、次はどんな料理がキッチンから出てくるのか楽しみになってきた。女の子たちも料理をきっかけに、旅行や恋愛といった話で盛り上がっている。
「リビングはそんなに広くないし、天井も高くはないし、窓からは東京タワーもレインボーブリッジが見えない」けど、それでもみんなが甘美な空気に包まれた、ハッピーなひとときだった。

「あのね、ホームパーティは招いた男サイドが手料理を振る舞わなくちゃ。気の利いた女の子なら一緒にお手伝いもしてくれる。男女でテーブルを囲む時、食事は大事だよ」

ギラギラした得体の知れないネットベンチャー系の社会人パーティを彷徨っていた心に、この落ち着いた台詞はどれほど刺さり、救われたことか。「俺は人生の楽しみを知ってるぞ」的な年上の大人たちに、その夜とても大切なことを教わってしまったのだ。
以来、「男子どんどん厨房に入れ。そしてその機会を楽しめ」の忠告通り、ホームパーティ(6~30人規模)を300回前後は実践した。そして次第にこうしたスタイルの集まりのコスパが圧倒的なことも分かった。

例えば金額面。店での飲み会が1人5000円(コース料理+飲み放題)だとすれば、参加した男は1人あたり7000~1万円(女の子負担が3000円~0円の場合)を支払わなければならない。それに対してホームパーティは、女の子から徴収する面倒もなく、男1人あたり3000~5000円で済む。

文字通りアットホームで一丸となった空間の中で、手料理を前に一人一人とコミュニケーションが深く取れる。ゆえにまともな恋のチャンスも向上する。一緒にキッチンに並んでみんなでワイワイガヤガヤなんて光景は、店飲みでは絶対不可能な素晴らしい体験になる。それなりの料理を手際良く作れる男を悪く言う女は、この世にいない。

ずばり言おう。「ホムパ(ホームパーティ)こそコスパ(コストパフォーマンス)が最も優れた男女出逢いの場所」だ。

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