2015.08.11
コスパ。読んで字のごとく、コストパフォーマンスの略語。価格(費用)に対して価値(効果)が高い場合は
「コスパが良い(高い)」、逆の場合は「コスパが悪い(低い)」など、今の時代、ありとあらゆるモノがこの“コスパの良し悪し”で評価されがちだが、化粧品業界はそう簡単にいかないないのが現状だ。
商品の機能や品質においては、百貨店・ドラッグストア関係なく高いし、“良いモノ”をつくっているだけでは売れない時代。そこに、どのような価値をつけていくのかが重要になってくる。化粧品業界のコスパ事情を検証した。
■モテメイクはコスパが良い?
昨年、マスカラ市場に強烈なインパクトを与えた「モテマスカラ」。モテメイクがSNSで話題になっている最中に、“モテるマスカラ”なんてユニークなネーミングもさることながら、カラフルで洗練されたスタイリッシュなパッケージは、若い女の子たちの心を大いにくすぐった。
23歳になったばかりのWebデザイナーの友人は、「化粧って、結局は“相手にどう見られたいか”なんですよね。でも、(メイクをすることで)自分の“価値(=パフォーマンス)”が上がるなら、メイクしますもん。仕事の上司や先輩……にはある程度、好きな人にはよく見られたいって思うのは当たり前の感情だと思うんですけど……」。
そんな彼女が選んだ唯一のコスメは「モテマスカラ」だった。
その理由を聞くと、「長くてボリュームがあって、1本1本ぱっちりした美まつげをつくってくれるだけじゃなく、素まつげもキレイにしてくれるから」。艷やかな美まつげをかなえるマスカラは独自の美容成分となる天然「エンドミネラル」を配合しているため、素まつげも美しくしてくれるというのだ。この価格でメイクをしながらキレイになれるというなら「ちょっと試してみよう」と思った人は多いハズ。
メーカー側の狙いは奏功し、発売からわずか20日ほどで55万本を売り上げた。メジャーなブランドを押さえ、マスカラ部門でNo.1 の売り上げを獲得。さらに、女性誌、美容誌のベストコスメも受賞する快挙を成し遂げたのだ。
「マスカラを塗ると目ヂカラがつくから、アイラインやアイシャドウもしっかりやろうって思う。目元メイクに気合が入るんですよね。そうすると私自身の気分も上がるし」。
市場に一石を投じた「モテマスカラ」はこの秋、高スペックの機能を携えて新登場するという。美まつげになれる美容成分をたっぷり配合。彼女に告げると「マスカラの機能が高くなっても、結果、モテなければ意味ないですけどね……」。さて、その実力はいかほどに?
モテマスカラONEリフトアップ ¥2,700(税抜き)
2015年9月1日発売/フローフシ
一方で、「コスメにおける、コスパの良し悪しっていかがなもの?」という意見も聞こえてくるのも事実。
「いかに安く、良いものを買うかっていうのが今の流行りみたいになってるけど、コスメはコスパじゃなく、良いものを使いたい。あえて高いものを買いたくなるし、選んでいる」と主婦歴ン十年の友人は言う。
「それに化粧品の良し悪しは周りの評価よりも、自分の肌で判断しないとわからないと思う。有名なモデルやタレントが“いい!”と言っても、試してみたら私には合わなかった、なんてことあるもの」と。
化粧品を選ぶ基準はコスパじゃない。なぜなら、価格よりも価値を重視する傾向が絶対的に強いから。
■美容のプロを唸らせた美容液
辛口評価で知られる美容のプロたちが「いいね!」と愛用しているのは、「肌のゆるみ」を感じる30代女性の肌悩みに着目した「資生堂エリクシール シュペリエル」の美容液。肌悩みの上位に挙がる、ハリ・弾力の低下にアプローチするエイジングケアアイテムだ。
何がスゴいって、資生堂の研究力。
1983年には肌とコラーゲンの関係に着目してこのブランドが誕生しているというから……30年以上の歴史を誇る。
肌のメカニズムを解明してダメージの根源となる原因を追求したり、新しい美容成分の開発や掛け合わせもできるようになった。
そこには研究者たちの功績がある。日本、いや世界の美容業界を牽引するリーディングカンパニーとしてのプライド、と言っていいかもしれない。
年を重ねても「キレイでいたい」という女性たちの想いに応えるべく、科学的に裏付けられた研究理論に伴い、化粧品技術を高めていったのは、この人たちのお陰なのだ。「化粧品は嗜好品ではなく、実用品なのよ」と誰が言ったか覚えていないけど、私たちの生活の中に根付いたのはまぎれもない事実だ。
私たちはそれを一番近いところで見て、聞いて、実感しているのだ。「この技術を、この想いを、この商品を知ってしまったら、使わずにはいられない」。情報を発信する“書き手”が魅せられてしまった一品。化粧品にはこういう秘めた想いがたくさん詰まっている。
エリクシール シュペリエル エンリッチドセラム CB 35mL ¥7,500(税抜き・編集部調べ)8月21日発売/資生堂
■ラグジュアリーブランドの価値はどこでみる?
美人で飲み友だちのコスメバイヤーにコスパについて聞いてみたところ、「ドラッグストアで売られている商品だって、使い勝手がよくて肌効果も高ければ、リピ買いしますからね。同時に、対極にあるラグジュアリーブランドの化粧品も同じなんですよね。美容皮膚科並みの肌効果を得られるし、(クリニックで施術を受けるのに比べれば)コスパの良い商品だと思いますよ。要は、その人の絶対的な価値に値するか否かなんですよね」。
たとえば、ラグジュアリーブランドの代表格として知られる「シスレー」。植物の特長を活かし、植物がもたらす肌への効果を徹底的に検証してからモノづくりをする姿勢は創業当時から変わることはない。
これだけでも充分に価値を見出すことができるけど、それだけで終わらないのがラグジュアリーブランドの強みといえる。
肌にのせたときの感触。スーッと伸びるテクスチャーや後肌の心地良さ、副交感神経を刺激する香りもそう。簡易化が叫ばれている中、どっしりと手応えのある美しいパッケージはドレッサーにあるだけで優越感に浸ることができる。決して見せびらかすわけじゃないけれど、これらの要素が肌の細胞一つひとつに浸透していくような気がするのだ。
これは、コスパの意図する価値の中でも最も大切な部分。肌のお手入れをする満足度、化粧品を使う喜びは、それだけでキレイになれるチカラを持っている。
シスレーから秋に発売される「スプレミヤ」のナイトクリームは、睡眠中の肌に着目し、一夜一夜肌の調子を整えてくれるプレミアムシリーズ待望のアイテム。極上のテクスチャーと使い続けることでその良さを実感できるクリームは、使った者だけにしかわからない“価値”を生み出してくれるだろう。
スプレミヤ バーム 50mL ¥75,000(税抜き)
2015年9月1日発売/シスレージャパン
ビューティ的コスパの捉え方を先ほどから語っているが、これだけは例外。それは香り。
スキンケア、メイクアイテムなどは「肌がキレイになった」「目がぱっちり大きくなった」「唇がぷるんとした」など目に見える効果をコスパの良し悪しで判断することができるが、香りは目に見えるものではないから判断のしようがないのだ。
■香りはコスパで語れるモノ?
香りには特別なチカラがあると思っている。見た目印象を左右するのではなく、もっと奥の奥に訴えるような、体の芯を押されるような感覚。
香りは、記憶に刻まれることができるのだ。
どうしても忘れられない香りがある。先日、偶然にも知り合いの男性がまとってきた香りがまさにソレだった。
正確には、似た香り……だったのだと思う。でも、一瞬にしてあの頃の記憶が蘇ってきたのだ。懐かしさと切なさが入り混じった、なんともいえぬ不思議な感覚。
香りが長く続けば続くほど、その記憶は深く刻まれていくような気がする。「アトリエ・コロン」のフレグランスは、コロンのようにフレッシュなのに、オードパルファンのように香りの変化を長く楽しむことができる。それもそのはず、賦香率が15%〜20%と高いのが特長なのだ。人気No.1の「オレンジ・サングイン」は産地にこだわった3種のオレンジの香りが広がる、今の季節にぴったりのアイテム。
香りは目に見えるモノではないが、相手の記憶に残る有効な手段であることは間違いない。香りにおいては、コスパ云々はナンセンス。
オレンジ・サングイン 30mL ¥8,300(税抜き)/アトリエ・コロン