2017.05.29
始発の東京駅から出て最初の停車駅、神田、その次の御茶ノ水は都心でありながらオフィス街とは全く違う独特の顔をもつ街だ。基本的には学生街とされながら、古書店街、スポーツ店街、楽器店街といった専門店が集積し、中華の名店やカレー激戦区などグルメの街としての一面も備える。狭いエリアに新旧・多種多様なものが混在しているにもかかわらず、何となくまとまっている感があるのがこの街の“スゴイ”ところ。なぜ、こんなに集まってしまったんだろう−−−−誰もが不思議に思うこの疑問に、真正面から向き合ってみた。ちなみに、このエリアの町名には“神田○○町”と頭に神田がつくところが多く、江戸時代からまとまりがあるということがうかがえるんだな。
世界に冠たる日本の古書店街「神保町地域」
駿河台下交差点を拠点に、明大通りを御茶ノ水方面に歩くと楽器店、靖国通りを小川町方面に歩くとスポーツ店、神保町方面に歩くと古書店が集まる。なかでもいちばん古い歴史を持つのが古書店街だ。
古書店街は明治初頭に相次いで建てられた法律学校(現在の明治大学や日本大学、専修大学など)の学生向けに法律書を扱う書店が増えたことが始まりとされているが、なぜこれだけ多くの大学がこの地域に建てられたのだろうか。その答えは古書店街の外れにある学士会館に行けば一目瞭然だ。ここは東京大学発祥の地とされ、旧館の正面玄関脇に石碑が建っている。
東京大学はその後本郷へ移転していくが、我が国最初の大学が建つ地域に私立大学が追随するというのは納得のいく話。現在は法律書に限らず、文学や古典、洋書、芸術、趣味、文化など多岐にわたる古書が勢揃いし、外国からの観光客も多く訪れる。
外国の人たちは気づいているだろうか。ほとんどの古書店は靖国通りの南側に軒を連ね、間口は北を向いている。これは店頭に置かれた本が日焼けするのを防ぐためで、こういったところに先人の知恵というか、本への並々ならぬ愛情がうかがえる。