2017.02.22
それは、突然起きた。
──夜21時過ぎ。東京の夜景が一望できる六本木の高級レジデンスの一室には、仕事を終えた男と女たちが集っていた。今夜は楽しいホームパーティだ(*1)。平日なので一人、また一人と参加者が遅れてやって来る。ある者は恋の予感に心をときめかせながら。そしてある者は席に着いたばかりの初対面の相手を値踏みしながら……。
(ちょっといいですか?)
長方形のテーブルの対角線上に座っている家主の友人からLINEが入る。隣の女の子と会話が弾んでいたので思わず舌打ちしたくなったが、見ると表情が相当歪んでいる。何かこの場で言えないようなことでもあるに違いない。さりげなく席を外して事情を訊く。
「どうしたの、緊急事態?」
「何か臭ってきません? もう限界です」
彼が言うには、隣の女の子の“足の臭い”が強烈でこれ以上耐えられそうにないとのこと。できれば席を替わるか、早めにお開きにしたいとザワつき始める。当の本人はなかなかの美女。巻き髪クルクルにして会話中に「ホントですかぁ⁉」を連発するイマドキ女子(*2)じゃないか。そんなワケないだろ〜。
……うん、確かに臭う。独特だ。新しい席に着くなり、それはモフォッ〜といった感じで嗅覚を刺激してくる。目の前の茹で上がったパスタなどどうでもよくなってきた。ちなみにこの家主の友人はみんなが帰った後、深夜にも関わらず速攻でルームクリーニングのサービスに連絡して床から丹念に掃除してもらったそうだ。彼はこの夜の異臭騒ぎを「ホムパのテロ事件」と呼んでいる。
しかし、ここからがポイント。彼が拒絶するほど悪くなかったのだ。正直言ってちょっと興奮してしまった。“足の臭い”というのは一般的にはマイナス要素と捉えられがち。多くの男たちは友人のような反応をするのだろう。でも自分は違った。要するに「巻き髪クルクル美女がこんな臭いを放つのか!」というギャップが快楽へと誘った。じゃなきゃ「一日中ストッキングとパンプスを履いて仕事を頑張った」彼女に対して失礼だし、この先の人生は愉しめないと思う。
嗅覚はエッチのスペシャリスト。加齢臭にうっとりする女
飲み会を繰り返していた頃(*3)、「五感テスト」を開発したことがある。これは女の子たちに「エッチする時にどの感覚を一番重要と思うか。興奮材料とするか」をヒアリングするだけというもの。すると、面白いデータが出た(独自調べ)。
視覚 17%
触覚 55%
聴覚 15%
味覚 7%
嗅覚 5%
第六感 1%
過半数の女の子が「触覚」と答えたのだ。これはもうノーマルラインに間違いない。対して「視覚」はエッチに対して未熟、「聴覚」はやや変態を意味する。そして「味覚」はただのド変態、「嗅覚」はスペシャリストなド変態と結論づけた。これでは気の合う女の子がなかなか見つからなかったワケだ。ちなみに「第六感」はシャレのつもりなのか「セックス・センス」と呼ぶらしい。
こんな話もある。会社の部署の忘年会で、幹事役だった知人の女の子は上司のオジサンの上着をハンガーに掛けてあげた。その時とてもいい匂いがしたので、思わず「部長、コレ何の香水つけてるんですか?」。するとこんな言葉が返ってきた。「いや、何もつけてないけど」。
彼女はオジサンの“加齢臭”に夢心地になったのだ。これも一般的にはマイナス要素とされている。でも好きな人にはそれはたまらなく魅了される世界。以来、彼女はそれまで眼中になかった上司に好感を抱くようになったという。