2016.01.20
東京の花柳界が最盛期を迎えた昭和12、13年頃、600人もの芸者でにぎわった花街・神楽坂。今も石畳の路地裏には、格式ある料亭や割烹が軒を連ねており、着物姿の雅な女性や芸者にばったり出くわすことがある。一方、表通りには、フランス料理屋、スペインバル、中華料理の老舗店からエビや貝料理の専門店までそろっていて、まさにグルメの伝統と革新が混在しているといった感じだ。
筆者がこの町に暮らすようになって、2年。これまで、さまざまな店を食べ歩いてきた。全制覇にはまだまだ道のりは長いが、訪れる店数が年月を重ねるごとに増えるたび、「また行きたい！」と心から思える店が、この頃かなり限定されるようになってきた。少しだけ肥えた舌と共に、今回は、神楽坂住民ならでは、本当に美味いとおすすめできる、テイスティーな神楽坂ランチ5店をご紹介したい。
優雅な空間、おかわりしたくなる彩り御膳。
極上の神楽坂テイスティー・ランチ
ー神楽坂 おいしんぼー
隠れ家的な料亭が立ち並ぶ一角にある『神楽坂 おいしんぼ』は、黒板塀と軒先に吊るされた“杉玉”が目印、レトロな和風一軒家を改装した店だ。この日、筆者が通されたのは5つテーブルのある奥座敷。大きなガラス窓、陽だまり、イグサがほんのり香る畳が、心地良い空間。季節ごとにメニューが変わる“彩り昼御膳”をさっそく、注文してみた。
鮭の南蛮仕立ては、さっぱりと上品な味。茄子のオランダ煮は、喉をつるっと通るまろやかさ。栗の炊き込みごはんと岩塩でいただく天然マイタケの天ぷらのコンビは絶妙で、思わず、おかわりしたくなる味。正座の足がしびれてきた頃、デザートのわらび餅が到着。ペロリと食して、ランチタイムは終了。時がゆったり流れる優雅なムードの中、いただく食事はお腹を満たす以上の付加価値がある。これだけそろって、1,750円（税別）なら、コスパの面でも十分といえる値段だろう。
おいしんぼのランチメニューは、食べる人を飽きさせない。ほぼ月ごとに変わる昼御膳メニューのほか、“昼会席”も絶品だ。1人2,500円と少し値は張るが、今月は、先附が、数の子と仙台芹粕和え。旬の鮮魚のお造里、山椒白掛け、味噌くるみ、菜花昆布でいただく鰆（さわら）の焼き物、青海苔の土鍋めしとお吸い物が、冷えた体にジュワーッと沁みわたる。彩り小鉢、自家製そばなど、軽めのメニューも豊富だ。
神楽坂 おいしんぼ
東京都新宿区神楽坂4－8
03－3269－0779
ランチ 11：30～15：00（L.O 14：00）
年中無休
http://kagurazaka-celux.com/
迫力の前菜&フランス郷土料理・“タルトフランベ”は大傑作
ーフレンチ前菜食堂 ボン・グゥ 神楽坂ー
「神楽坂はフランスに似ている」と、神楽坂在住のフランス人。石畳が残る街並みに、ブランジェリー（パン屋）など、小さなお店が点在する風景は、ムフタール（5区）を想起させるとか。また別のフランス人によると、「モンマルトルの丘を想い出す」とも。フレンチレストランも数多くあるが、中でもピカイチなのが、『フレンチ前菜食堂 ボン・グゥ 神楽坂』だ。
名前の通り、“前菜が主役”というユニークなコンセプト。こちらは、人気メニュー・タルトフランべセットの前菜盛り合わせだ。スナップエンドウ、クスクス、かぼちゃサラダ、サーモンのマリネなど、何種類もの前菜がちょっとずつ食べれるのだが、ボリュームは満点。ひと皿平らげる頃には、かなり満腹になるので、朝食抜きで行くことをぜひおすすめしたい。
こちらが、メインのタルトフランベ。フランスのアルザス地方の郷土料理で、小麦粉を練った薄い生地にフロマージュ・ブランというフレッシュチーズを塗り、具を乗せてパリパリに焼いたピザ風のディッシュである。具材は、ベーコンと淡路玉ねぎの黒こしょう風味、釜揚げしらすと吉野川産青のり、リンゴとはちみつなどから選べる。筆者は、期間限定のチョリソーとパプリカ パルメザンチーズをチョイス。ふんわり香るチーズが食欲をそそるが、意外とライトな味なので、パクパクいけてしまう。
先の前菜とスープが付いて、なんと￥1,000（税込）。豚バラの香草パン粉焼き 粒マスタード和え、若鶏のフレッシュトマトにピリ辛ケッパー風味など、日替わりフレンチごはんセットや週替りカレーセットも同じ値段で味わえる。連日、ほぼ満席かつ、ランチタイムは予約を受けていないので、「待たずに食べたい！」という人は、早めか、遅めにずらすとスムーズに入れると思う。
フレンチ前菜食堂 ボン・グゥ 神楽坂
東京都新宿区矢来町107 細谷ビル2F
03－3268－0071
ランチ 11：00～15：00（L.O 14：00）
定休日 月曜・第3火曜
