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2015.01.29

vol.4 TOKYO Midnight
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深夜の東京で、眠れない、眠らない夜の過ごし方は様々だ。
バーや居酒屋で飲み倒す、カフェやファミレスでコーヒー三昧、クラブで馬鹿っ騒ぎ、漫喫で全巻制覇、サウナで倒れる……etc。東京では数ある深夜スポットのなかで、ふと忘れかけていた存在がある。それは、映画館でのオールナイト上映だ。

かつて、東京の繁華街に構える映画館の多くは、大小に関わらずオールナイト映画を連日行っていた。その空間は、昼の映画館とはうって変わり、独特の客層と、深夜ならではの秘密めいた空気が流れていた。酔っ払いやタクシー運転手、いちゃつくカップル、その筋の方など、人間観察しているだけでも好奇心をかきたたせてくれたものだ。現在ではオールナイト上映を行う映画館がめっきり減り、都内でも数えるほど。シネコン数軒で深夜上映(新作1本立てのみ)を行っているが、オールナイト映画の醍醐味といえばやはり“名画座”にある。昨今、激減する東京の名画座の中で、オールナイト映画を毎週末楽しめる唯一の存在が、池袋にある「新文芸坐」だ。

s_旧_文芸坐_01 旧文芸坐が開館した当時の光景

都内きっての名画座の老舗といわれる「文芸坐」は、1956年に開館。作家・三角寛が手掛けた映画館として、「文芸坐」では洋画、地下にあった「文芸地下劇場」では邦画の中から、文化的作品を上映することでも話題となった。1997年に一度閉館するも、2000年に「新文芸坐」として復活を遂げた。支配人を務める矢田庸一郎さんに話を訊いた。

──60年近い歴史を持つ「文芸坐」のコンセプトとは?

「旧文芸坐時代からの特徴は、まず2本立て上映だということ。オープン当初は、新作の1本立てや、リバイバル公開など、色んな形態で興行をしたと聞いています。その後、ある時期から、2本立てで、しかも、ロードショーよりも安い料金で公開するスタイルになっていきました。それと、古今東西。新旧問わず、日本だけでなく世界の映画も扱うという4つの柱が、私たちの重要な精神であり、今もそれを受け継いでいます」

s_cut_0401 「新文芸坐」支配人・矢田庸一郎さん

──「新文芸坐」ならではのオールナイト映画の特徴とは?

「現在は毎週土曜日の夜に、だいたい3~4本立ての特集を組んでいます。昼のプログラムでは、比較的オーソドックスな映画が多いのですが、オールナイトの場合はカルト的であったり、先鋭的な表現をしている映画などを取り上げる傾向にあります。以前、チリ出身の鬼才監督アレハンドロ・ホドロフスキーの来日に合わせてオールナイトの特集をやりましたが、監督のトークライブはキャンセルになったにも関わらず、全席満席になりました。定番の映画ばかりやっていると、やはり活気が失われると思います。現在ではオールナイトのプログラムは若手スタッフに任せて、アニメやSF、ホラーといったものや、若手の気鋭監督や、世界の異才映画作家などの作品を特集上映しています。」

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──ビデオやDVD、ネット配信などの普及とともに、名画座や老舗劇場の閉館ラッシュが続いていますが、「新文芸坐」にも影響が?

「文芸坐しかり、映画業界全体的も動員が落ちてきているのは確かだと思います。ただ、映画は映画館で観るという人や文化は、確実にあると思います。その文化を駆逐してしまったり、映画館が世の中からなくなってしまうような、脅威的な存在とまでは思っていません。私も学生時代からの映画ファンで、その延長線上で映画館で働き始めました。その当時は、ビデオは持っていませんでした。今でも、ほとんど映画を自宅で観るっていうことはありません。映画を観るために、2時間ぐらい時間を空けて、その場所にわざわざ行き、映画館の暗闇の中で、集中して鑑賞するというスタイルというか方法に、固執しているようなところがあります。」

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──「新文芸坐」であり、オールナイト映画のこれからの存在意義とは?

「シネコンの登場や、さらに技術の進歩で、いつでもどこでも映画を見られる時代になりました。では、それによって映画ファンが増えたかというと、実はそうなってないのではないかと思います。どの映画を見ればいいのか、分からなくなってきているという状況があるのではないでしょうか。特に若い人は。昔から名画座は“映画の学校”と言われてきました。昔は、映画人の多くが名画座でたくさんの映画を観て、映画のことを学び、映画界に入った、という話をよく耳にしたものです。今、名画座に求められているのは、まさに、その“映画の学校”としての役割じゃないかと私は考えています。今後も文芸坐はそんな映画ファンに愛され、映画ファンが集う場所でありたいと思います。また名画の上映や、オールナイト上映で、今まで見たことのない映画や、映画監督と出会い、発見をしてほしい。それによって映画ファンが増えていけば、とても素晴らしいことではないかと思っています。」

「新文芸坐」のオールナイト上映では、サブカル心をくすぐる、ユニークな特集が毎週末ラインナップされている。眠らない街の映画館で、見知らぬ人たちと肩を並べて、睡魔と闘いながら映画を観まくる深夜のひととき。非日常的でちょっとハイな気分にさせてくれる、東京的ナイトライフの過ごし方かもしれない。 (Text :Yumi Sato
(Photo: Masashi Nagao)

<新文芸坐・2015年2月のオールナイト上映スケジュール>
2月7日「世界の映画作家Vol. 160 陶酔のセルゲイ・パラジャーノフ」特集
2月14日「血染めのバレンタイン 男の絆 タランティーノ&サニー千葉」特集
2月21日「病みつきハイテンション! 80年代ハイスクール白書!!」特集
2月28日「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 65 押井守映画祭2015 第二夜 『GHOST IN THE SHELL』編」特集

※詳しいプログラムは下記WEBサイトにて公開!
新文芸坐
http://www.shin-bungeiza.com/

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