2017.05.08
そもそも、江戸時代には日光街道の宿場町として栄えていた北千住。隅田川と荒川に挟まれた街並みには、昔ながらの商店街のほか、路地に一歩入ればレトロな香りが漂う先頭や寺院、土蔵が点在している。ここ数年は東京電機大学やら東京芸大などの大学が相次ぎ進出し、「学生の街」なんて新たな顔も見せているのだ。実は、JR東日本・常磐線や東武鉄道・東武スカイツリーライン(半蔵門線乗り入れ)、首都圏新都市鉄道・つくばエクスプレス、日比谷線、千代田線と、4社5路線も乗り入れており、利便性の良さは言うまでもない。近年では「住みたい街ランキング」の順位も急上昇中なのだ。
私にとっての北千住は、7〜8年前に駅前にある商業施設で仕事をしていたこともあり、意外と馴染みのある場所でもある。とはいえ、なんとなく治安が、とかオシャレ感がないとかとか、マイナスイメージが先行しているのも事実。
ではなぜ今回、北千住を取材地として選んだのか。それは当編集長のお墨付きということと、私自身も、最近人気があるし、当時行けなかった飲み屋街に行ってみたかったからだ。
居酒屋が”文化”として存在する街
北千住のお店は開くのも閉まるのも早いからと17時に待ち合わせる。久々に降り立った北千住は私の目から見ると少し綺麗になったかな?という印象。少し早めに着いたので、以前、仕事前にタバコを吸いによく立ち寄っていた喫煙所へ向かう。まだ存在していたことに心を弾ませながら、外国人や仕事帰りの土方系の方たちに囲まれながら一服。外国人の方は群れてわしゃわしゃ話をしているのに対し、日本人(多分)の土方系の方は物静か。サラリーマンらしき人も寄ってきて、紅一点の私のことをみんなちろっと見ていく。ちょっと怪しげな雰囲気は以前となんら変わりはなかった。
北千住の夜を歩いていく
西口でTOKYOWISE編集長と今回の旅先案内人・地元出身&在住のAさんと合流し、いざ北千住の夜の街へと出発。ロータリーを越え、てくてく5分ほど歩いて到着したお店は北千住屈指の人気店「大はし」。なんと16時半から開いているそうだ。まだ30分やそこらしか経っていないのに席は満席状態。何度来てもフラれているのだそうで、今回も仕方なく別を探すことに。ここはいつも開店前から行列ができるほど人気で、ベストは16時に集合かもとのこと。次に訪れたのは、THE大衆居酒屋感満載の「大衆酒蔵 幸楽」。ときわ通り(通称、飲み屋横丁)を入ってすぐに見えてくる。ざっと30〜40席くらいのいわゆる大衆居酒屋だ。まだ18時前なのにまあまあの入り。なんと10時オープン。昼間っから飲めるなんて嬉しいじゃないですか。短冊メニューがびっしり並ぶ店内はお洒落というわけではないが、楽しくお酒が飲める感じ。うーん、なかなかいい。早速ポテサラ(300円)を頼む。続いてハムカツ(300円)、ゲソ焼き(忘れた450円かな)、はんぺん焼き(350円)を頼むがどれも安い。ビールも500円くらいだし、酎ハイは350円だ(Aさん曰く、味には触れないで、とのこと)。常連客の年齢層は高めで、若い客は1組くらいしかいなかった。ビールも入ったところでさっそく北千住についてAさんにお話を伺う。
にぎわう北千住の大衆居酒屋
北千住とはどういう人種が多いのか?
「北千住とは自営業や労働者が多い街」だという。北千住に限らず、足立区全体もそうだし東武線沿線は物価も安く、家賃も安いから、ヤンキーじゃないけど、そういう若い子たちが集まるのだそう。若い子たちはいわゆる肉体労働や飲食店などの働き口が多いから、余計にそういう働き手たちが集まるというわけである。彼らは基本17時くらいで現場が終わるからそれに合わせてお店も早く始まり、早く閉まる。それが昔からある北千住の大衆居酒屋なのだ。
北千住には負のスパイラルがあるという。総じて高卒の人が多く、若くして結婚する。高校卒業後の選択肢が就職という子が大抵で、そうするとある程度働き口が限られてくる。そして飲食店しかり、町工場しかり自営業の人も多く「なんとなく実家を継ぐ」のだそう。そういう方々に子供たちも育てられているから進学するという感覚がないのだ。なぜなら彼らの親もそういう風に育てられてきたから。例えるなら鳶職の子は鳶職になる、みたいな。女性も22、23歳で結婚してそのまま地元に住み、そして子供を産み、またその子供たちも同じような人生を繰り返すのだ。というのが地元で育ったAさんのリアルなお話だ。
近年の北千住は、前述にもあるが、大学ができたり、駅前が整備されたりして、さらに電車が5線も乗り入れているから、都心部の人たちが意外にここ便利だし色々安いじゃんと気づき移住者が増えている(銀座、大手町まで15分くらいで行けてしまうし)。結果、街の階層が2つになったのだそう。繁華街を歩くとわかるのだが、安い大衆居酒屋みたいなお店の隣に、都心部にもあるような小洒落たビストロやカフェがある。それら新しいお店は大衆居酒屋とは違い、遅くまで営業しているのも特徴だ。そしてその奥ではキャッチのお姉ちゃんがいたりするけど、お洒落系の波が押し寄せてきているのがわかる。
北千住の心意気
Aさんは、北千住人気を若干嫌だなと思うのだそう。土地代が高くなってきており、資本を持っている会社しか参入できなくなってきていることやチェーン店が増えているのを見ると、やはり地元の人としては面白くはないという。足立区の人たちは、大衆居酒屋が好きで、そういうお店をよしとしているから小洒落たレストランができてもあまりなびかないのだ。。大衆居酒屋が続いているのも「あそこはどこどこの息子がやっているよ」とか「あそこんちは今こうなってるよ」などの近所付き合いがあって、みんな繋がりを持っているから 。そして、息子たちも親の世代から知っているお客さんを知っているからつぶすわけにはいかないという責任感を持っている 。でもそういう心意気こそが、大衆居酒屋がなくならない理由であり、足立区先住民の誇りなのだとAさんはいう。