TOKYO SLEEPER 東京快眠

2015.06.17

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東京快眠指南 Vol.13
by Megumi Kaji
人はどうやって眠ってきたのか 寝床の進化の研究

これからの熱帯夜の時期は別にして、眠りにつく時にこそ最もリラックスして、至福の喜びを感じる人は少なくないでしょう。快眠できる「寝床」、それが自宅の寝室の布団だと感じる人もいれば、むしろ旅先のホテルや旅館のシーツに糊が効いたベッドだという人もいて様々なようです。
私たちの睡眠や睡眠習慣のルーツを辿ろうとすると、行き当たるのはゴリラやチンパンジーなどの霊長類になります。進化の過程で、私たちの祖先初期人類は どうやって眠ってきたのでしょう。ヒトが受け継いだ眠りのDNAや睡眠文化はあるのでしょうか。
京都大学で野生チンパンジーやニホンザルの研究に携わる座馬耕一郎氏によると、チンパンジーは、高い木の枝を折ったり曲げたりしながらベッドを作り、そこ(つまり樹上)で眠るのだそうです。しかも、そのベッドは、その日に作って使い、翌日また新たに作る・・ということで、一年間で365個のベッドを制作するのだとか。しかも使い切りなのに枝を折ったり曲げたりし、その上に細い枝や葉を重ねる複雑な構造になっていて2,3か月は残るそうです。それほどしっかりした作りのベッドを5~10分程度、あっという間に作ってしまう、まさにチンパンジーはベッド職人とも呼べるようです。
今から約500万年前、私たちの祖先は直立二足歩行を始めたといわれていますが、座馬氏によると、まだ樹上で眠る適応性が残っていた可能性があり、チンパンジーのように木の上で眠っていたと考えられるそうです。それが、今から約200万年前、地上に降りて暮らすようになり、外敵の危険が増えたことから、安全な場所に「ホームべース」をつくり集団で定住するようになりました。寝床も移動型から固定化へ移っていったようです。
安全で快適な場所で眠れるようになった現代、その一方で睡眠に問題を感じる人が増加しています。ヒトの眠りと寝床はどのように進化してきたのか、21世紀の快眠を考えるうえで、これから定期的にレポートしていきたいと思います。

鍛冶恵
東京生まれ。1989年ロフテー株式会社入社後、快眠スタジオにて睡眠文化の調査研究業務に従事。1999年睡眠文化研究所の設立にともない研究所に異動後、主任研究員を経て2009年まで同所長。睡眠文化調査研究や睡眠文化フォーラムなどのコーディネーションを行なう。2006年、睡眠改善インストラクター認定。2009年ロフテー株式会社を退社しフリーに。2010年、NPO睡眠文化研究会を立ち上げる。
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