2015.05.12
外国人に人気の東京観光スポットといえば? 皇居や浅草、スカイツリーは定番中の定番。最近では、中野ブロードウェイ、ロボットレストラン、カプセルホテルも人気だという。しかし、TOKYOWISEとしては、外国からのお客様をもっと楽しませたいのが本音。そこで白羽の矢がたったのが、武蔵小山である。
武蔵小山(通称、ムサコ)といえば、日本一長いアーケード商店街「パルム」が有名だが、ほかにも、都会の森や天然温泉、安くて旨い呑み屋がワンサカ集まり、昭和の面影を色濃く残すスナック街まである。ここはまさに、東京の魅力がぎっしり詰った宝石箱。今回、武蔵小山商店街振興組合の理事を務める江の下正人さんご協力のもと、外国人観光客が喜ぶであろう6つのスポットを黄金コースで廻ってみた。
鳥勇 武蔵小山駅前店
武蔵小山駅の改札を出ると、炭火焼きの香ばしいタレの香りが漂ってくる。そのにおいに誘われ向かった先は、昭和元年創業の老舗「鳥勇」の駅前店(本店はパルムの中にある)。ムサコ散策の待ち合わせは、ここで軽く飲みながら待つのが定番だ。串メニューは全部で10種類あり、1本150円。皮・レバー・砂肝が1本の串に刺さった「ミックス」は、1本で3度美味しい人気メニュー。「うなぎ串があったら迷わずそれを食べますね」と江の下さん。焼き鳥屋に珍しいうなぎ串は、平日は40本、土・日・祝日は80本の本数限定だという。駅前で立ち飲みしながら焼き鳥を食べる。このフランクさもムサコの魅力のひとつだろう。
【鳥勇でのお約束】
「食べた串は捨てるな!」
自分で食べたい串を取り、タレを漬けて食べるスタイル(二度漬け禁止)。食べた串の本数、ドリンクはコップに書かれた「正の字」をカウントして精算する。
◎鳥勇
品川区小山3-19-10
TEL:03-3788-3458
月〜金14:00-22:00、土・日・祝日12:00-22:00
パルム
鳥勇で挨拶話を済ませたら、パルムを散策。約800メートルもある商店街には、歴史ある老舗からチェーン店までが軒を連ね、歩いているだけでも十分楽しい。創業90年の老舗「浜田屋」の鰻、「流石いがらし園」の鯛焼きは外国人観光客も喜ぶフードだろう。キングパフェ発祥の純喫茶「王様といちご」をはじめ、個性的なお店があるのも特徴。そして、パルムに2店舗ある「パン工房 こみね」(※1) のあんパンはぜひ味わってほしい逸品。つぶ、こし、うぐいすといった定番から、桜、青梅、落花生などの季節限定まで常時10種類ほどのあんパンが揃う。気取らないこの街にぴったりな、素朴なパンを味わおう。
※1メインストリートにある「パン工房 こみね」店舗は2015年5月現在改装中。
【パルムでのお約束】
「こみねのあんパンは、買ったらすぐ食え!」
持つとびっくりするほどボリューム満点のあんパン。食べながら長い商店街を歩こう。
牛太郎
散策してお腹が空いたらムサコの名店「牛太郎」へ。ここは地元の人だけでなく、酒飲みの間では有名なもつ焼き屋だ。「仂く人の酒場」と謳う店のメニューはどれも激安。煮込みに特製のニンニクダレをかけた名物料理「とんちゃん」は驚きの120円! 煮込みも120円、おしんこは90円、ビール(小)320円で、まさにせんべろの代表店。そして、牛太郎ではハイサワー割(390
円)の注文を。博水社の本社が武蔵小山にあり、地元で愛されているお酒だ。注意すべきは、営業時間。20時には閉店してしまうので、早めの来店を。
【牛太郎でのお約束】
「満席のときはベンチで静かに待て!」
開店と同時に満席になる人気店。満席のときは、カウンター後ろのベンチで静かに順番を待とう。間違ってもこの席から注文をしないように。
◎牛太郎
品川区小山4-3-13
TEL:03-3781-2532
月〜金14:30-20:00、土・祝日12:00-20:00
日曜休
nemo
ちょっとコーヒーでも飲んで、明日の朝のパンでも買って帰ろう。そんな気分で立ち寄りたいのが、ベーカリー&カフェ「nemo」(牛太郎のとなりにある)。パン屋にしては珍しく22時まで営業しており、夜になるとお酒も楽しめる店だ。店内はフランスのバールを思わせる雰囲気で、実際に外国人のお客さんも多く、ハード系のパンを買って帰られるそう。しかし、TOKYOWISEが注目したのは「バタートースト(250円)」。表面はサクサク、中はしっとりで、バターの風味に負けない、パン本来の美味しさがしっかり味わえる。先の「パン工房 こみね」と対をなす、ムサコのパン屋二大巨頭としてぜひチェックしておきたい。
【nemoでのお約束】
「迷わずバタートーストを注文!」
厚切りにしたnemo自慢のパン・ド・ミ。お店で絶妙な焼き加減を堪能すべし。
◎nemo
品川区小山4-3-12
TEL:03-3786-2617
9:00-22:00
水曜休
武蔵小山温泉 清水湯
酔いも醒めたら一日の疲れを癒しに銭湯へ。460円の銭湯料金で2種類の天然温泉を堪能できるスポットがムサコにはある。清水湯は大正13年創業、地域に根差した銭湯として地元民に愛されていたが、高度経済成長とともに衰退。閑古鳥が鳴くなか、二代目が第一源泉の天然黒湯温泉を掘り当て大成功。現在の三代目が第二源泉の黄金の湯を採掘しリュニーアルしたという。「武蔵小山は、老若男女が集う庶民の街。皆が等しく楽しむことができ、心もカラダもあたたかくなる街ですね」と街の魅力を語ってくれた三代目の川越太郎さん。昔ながらの下町情緒を、ぜひ外国の方にも体験していただきたい。
【清水湯でのお約束】
「手ぶらで行け!」
手ぶらセット(タオル+ボディソープ+シャンプー)は120円の安さ。
◎武蔵小山温泉 清水湯
品川区小山3-9-1
TEL:03-3781-0575
火〜金12:00-24:00、日8:00-24:00
月曜休(祝日の場合は営業)
いっぷくどう
最後のスポットは、もちろんスナック。駅前から見てパルムの左側に位置する「駅前ドサクサ横丁」には、昭和の面影を色濃く残すスナックや飲み屋が所狭しと並んでいる。夜になり看板の灯がつくとノスタルジックな雰囲気になり、外国人観光客もさぞかしお喜びだろう。今回訪れたのは、カジュアルPUBスナックの「いっぷくどう」。様々なプランがあるが、4名以上であれば時間無制限で焼酎ボトル1本ついて一人5,000円と、ものすごくリーズナブル。さらに、かわいい女の子も横に付いてくれるのだ。「ここは貧乏人の街ね。でもエンゲル係数は高いの」。このママの言葉にムサコ愛を感じずにはいられない。そうだ、この街で暮らす人々は心が豊かなのだ。
【いっぷくどうでのお約束】
「女の子が席に着く時と離れる時は、グラスを合わせて乾杯」
スナックでの乾杯は挨拶代わり。身内の会話がはずんでいても必ず乾杯を。
◎いっぷくどう
品川区小山3-14-2-1F
03-5702-8119
20:00-25:00
日曜・祝日休
今回は外国人向けの観光スポットとして、日本の文化や情緒あふれるムサコスポットを紹介したが、nemoを筆頭に若い人たちによるスタイリッシュなお店が増えつつあるが実情。「カオスな感じになっている」と江の下さんも表現するとおり、ムサコは今一番おもしろい時期にある。この街の魅力は実に奥深い。引き続き、TOKYOWISEではムサコを追っていきたいと思うのであった。