2015.01.31
- ARTIST
アーティスト自身による
自画自賛 Vol.07
下田昌克
大恐竜人間が渋谷襲撃
現在、渋谷パルコミュージアムで開催中の「大恐竜人間博」が、非常に面白い!
これはただのアート作品展ではない。画家・下田昌克が制作した恐竜の被り物をきっかけに、藤代冥砂が写真を撮り、谷川俊太郎が詩を書くという奇想天外な合作展なのだ。下田さんの作る恐竜を元に、テーマなし、オーダーなしで、それぞれの作品を観て自由に作ったというが、これが不思議なほど生命力と面白みに満ちている。
今回、この企画の発端となった下田昌克さんに、「大恐竜人間博」の舞台裏について訊こうと、会期直前でごった返すアトリエに押しかけてみた。とにかくこの男、目が離せない存在なのだ。
──そもそも、なぜ恐竜を作り始めたの?
2011年の夏に上野の博物館でやっていた「大恐竜博」を観に行ったの。子供の頃から恐竜は好きで、昔は標本とか剥製って棒立ちだったけど、最近の展示は一歩踏み出したり、尻尾に動きがあったり、すごくカッコ良くて感激してさぁ。もう買い物する気満々でミュージアムショップに行ったら、その時欲しいものが一個もなくて。がっかりして家に帰ると、ふと絵を描くためのキャンバスの布が目に入ったの。それでおもむろに家にあったミシンや縫い針で、トリケラトプスの被り物を作ってみたんだよね。何で被り物だったかは思い出せないんだけど、被った瞬間に「ウォーッ」って変身する感じで、テンションが上がっちゃって。そこから止まらなくなっちゃったんだよね。
──実在の恐竜がすべてモチーフになっているの?
一角獣とか想像上のものも時々あれば、カブトムシとか巻き角のヤギとか、恐竜以外にも太古の臭いがするようなものも作ってる。恐竜に関してはちゃんと調べて、出来る限り忠実に作ってるつもりなんだけど、被ると結構カッコいいのよ。このヤギとかちょっと神々しくない? ヤギとかイノシシって、角が大きい方がメスにモテるらしいんだけど、自分の角が伸びすぎて頭に刺さって死んじゃうやつとかいるんだって。だから、女子にモテるのも命掛けなんだね。
──角の質感とか結構リアルだよね。洋服のようにパターンを引いて作っていくの?
いまだに僕の頭の中は2次元みたいで、全然パターンとか分かんないんだよね。布に横顔の形書いて2枚縫い合わせてから、どうやったらこれが立体になるのかを考えて、綿を詰めたり、パーツを足したり、毎回試行錯誤しながら作ってる。芯を入れるときっとどんな形でも作りやすいんだけれど。柔らかい骨って良くない? クッションみたいにモコモコしてるものって好きなんだよ。
──絵を書くことと、恐竜のような立体を作ることってどう違う?
ミシンと格闘している感じが面白いんだよね。ないとは思うけど、もし思い通りに作れるようになっちゃったりしたら、飽きちゃうのかもしれない。しっちゃかめっちゃかやってる快感というか。ふと思いついて形が出来てみると、こういう風にやったらあの恐竜が出来るのかなぁって、段々分かっていく感じが良いんだよね。絵だとそれなりに書いてきているから、慣れで書いちゃう時とか、超ダサいなぁって思っちゃうの。好きだから毎日書いちゃうんだけど、ノルマとかは絶対持たないようにしてるんだよね。腕が鈍るより、飽きる方が怖いって思っちゃうから。職人とかみたいに技術を磨く世界とも違うから、慣れとかってあざといしダサいと思うんだよね。せっかく作るんだから、ドキドキしたいんだろうね。
NEXT ▶藤代さん、谷川さんと一緒にやるきっかけは?