ARTIST SELF-PRAISE 作家自画自賛

2017.08.31

ARTIST

アーティスト自身による
自画絶賛 Vol.20
映画監督:ふるいちやすし
女優:二宮芽生

世界で認められた国産インディーズ映画を
日本はどう扱うのか

ロンドンフィルムメーカー国際映画祭に於いて最優秀監督賞(長編外国語映画部門)を授賞した『千年の糸姫』。しかし未だ日本での劇場公開は未定。一方で、アメリカの配給会社はAmazonでの配給権を獲得するなど、日本の映画界とは異なった動きで評価されている。この事実はいったい何を意味しているのか。
ふるいちやすし監督自身の寄稿と、主演女優である二宮芽生(にのみや めう)さんのインタビューからこの作品の魅力と現実を解き明かしてみたいと思う。

インディーズでしかできない方法論


左: インターナショナル版ポスター | 右:日本版ポスター [ふるいち監督の寄稿より(以下[ふるいち監督])]
とにかく濃密な映画作りでした。役者達やスタッフ達との会話、リハーサル、ロケ地の皆さんの協力、その全てが濃密だったという印象が残っていて、それは映画作家としてこの上ない幸せだと今も感じています。それは一重にチームみんなの意識の高さと情熱のお陰で、それに一つ一つ真摯に向き合えたのはチームが少人数だったからかもしれません。中でも主演の二宮芽生とは多くの時間を費やし、この物語の持つテーマや伝え方、糸姫という役柄やそれを取り巻く人や環境のことまでじっくり話し合う事ができました。実はこれこそがインディー映画ならではのやり方で、大人数のプロジェクトやスターを使った映画ではなかなかできないことなのです。そして二宮芽生自身、初めての主演映画であったことで、それに並々ならぬ情熱と集中力を注いでくれたことも幸運でした。

二宮芽生(以下二宮):その当時は役者として、すごく不器用だったので、役に自分が乗り移ることができるか不安でした。できる限りその役のまま生活した方が集中が途切れずできるだろうと思い、食べるものから役になりきろうと。そもそも、糸姫の役はひっそりと暮らしている役ですので食べ物も質素にしなければと考えて、普段は食べることが大好きなんですけど、粗食にしていたら体力がどんどん落ちてしまいました。
周りにはこの作品に賭けようという役者さんやスタッフさんがたくさんいて、その中で私なりにこの役をどう全うするかを考えました。そこに集中するにはとてもいい環境で仕事をさせてもらったと思っています。

『千年の糸姫』より
[ふるいち監督]:もちろん他にはベテランの俳優も出て頂いているのですが、稽古場や撮影現場の空気は彼女のそのひたむきな態度に引っ張られて、全ての人がこの物語に深く入り込んでいってくれました。僕はこういう映画作りが大好きで、これからも小さなチームと時間と集中力を注いでくれる新人俳優とやっていきたいと思ってます。そこから生まれる物は決してメジャーの映画には真似できない、濃密な魅力なんだと自負しています。それはロケ地探しにしても撮影に関しても同じで、時には一人でカメラを持って走り回り、ある時は地元の人に秘密の場所を案内してもらったりしながらじっくり撮るということもありました。そこで撮った物がそのまま劇場レベルのクオリティーを満たしているというのは、もう今のカメラ技術に感謝するしかありません。それがあるからこそ、海外の映画祭でも賞を戴いたり、メジャー作品と同じような劇場で上映しても遜色のない作品ができるのだと思います。こういう時代がくれたチャンスを最大限に活かすことが作家としての使命だと感じています。

二宮:沖縄生まれなのですが沖縄にいたのは中1まで。中2から高校2年までドイツとオーストリアに行っていて、そのあと1年間だけ、受験勉強のため横浜の高校に通い、大学も日本で大学院に行って、美術教育の勉強をしていました。それだけに、この糸姫の役をやりながら、日本人としてのアイデンティティを深く考えました。向こうにいるときは、日本のことを上手に説明できなかった自分がいたし、この映画がきっかけになったのかもしれませんが、今は、海外向けに「COOL JAPAN TV」というWebチャンネルで日本を紹介する番組を持っています。
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