2014.10.03
- ARTIST
アーティスト自身による
自画自賛 Vol.03
「TOKYO PHOTO」代表 原田知大
いわゆる美術館などで鑑賞する写真展ではなく、写真作品を販売するフォト・フェア(見本市)としてアジア最大級の規模にまで成長した「TOKYO PHOTO」。2009年の初開催から、毎年国内外有数のアートギャラリーが集結し、世界トップクラスの写真家たちの作品を出展してきたことでも知られている。そして今年10月3日から開催される「TOKYO PHOTO 2014」では、改めて“日本の写真”をフィーチャーした企画展を行うという。今回は東京フォトの仕掛け人、原田知大さんに日本の写真の魅力、そして写真をコレクションする楽しみについて語っていただいた。
TMasahisa Fukase “Ravens” Kanazawa, 1978
──2009年に東京フォトを立ち上げたきっかけを教えてください。
2008年に初めて訪れた「PARIS PHOTO」で、日本写真の特集を観たことです。世界的権威のある写真フェアのパリフォトで、日本の写真がこれだけ評価されているにも関わらず、日本にはそれを受け入れるコレクターや発信する場が足りないと感じ、思い切って自分で立ち上げたのが始まりでした。
──日本の写真の世界的評価はどういうものでしたか?
世界ではドイツとアメリカ、そして日本が写真大国だと言われています。ヨーロッパの各地にも素晴らしい写真家はいますが、相対的に見るとこの3国は、写真の芸術的平均値も非常に高く、特に日本の写真家の技術力は群を抜いています。日本には古くから出版物があり、良いカメラがあったことで、それを支える技術のある写真家が育ってきたんだと思います。また、アジアでしか撮れない世界観と、それを撮れる環境があったのは日本だけだったこともありますね。
Mika Ninagawa “noir” 2010, Courtesy of Tomio Koyama Gallery ©mika ninagawa
──これまで海外の名だたる作品や写真家を招聘してきた東京フォトが、今回“日本の写真”をテーマにしたのはなぜですか?
これから東京フォトを世界へ発信していくにあたって、日本の写真の素晴らしさを改めて評価したいと考えました。「日本の写真って何ですか? 」展は、戦後の1950年頃から近代という幅広い世代を代表する24名の写真家の作品を、各ギャラリーが出展します。1990年代以降、現代アートが生まれた背景には、ネットやデジタルカメラの登場など生活環境の変化があり、現代写真の作品の中にはそれが表れていると思います。そこから過去の作品へと辿っていくことで、日本の作品の作家性や被写体、技術などが時代と共にいかに変化したのかを感じてもらえたら面白いんじゃないかと思います。また、来年以降、第2部として1930年代あたりから近代までさらに幅広い作品を集めたいと考えています。
Naoki Ishikawa “Everest #3” 2011,Courtesy the Artist and SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo.
──今回、もうひとつの目玉でもある「国際メディア・フォト」エキシビジョンでは、日本の雑誌も取り上げるそうですね。
紙媒体は、日本の写真文化を語る上で欠かせない存在だと考え、これまでも優れたエディトリアル・フォトを記事として展示してきましたが、今回は雑誌に掲載された写真データからプリントを起こして、額装した写真展を行います。国内外7誌の媒体が集まってこういった写真展を行うのは、国内はもちろん、世界的にも初めての試みだと思います。この企画展を東京フォトならではの新機軸として、日本の写真とは何かっていうことが伝わるような写真フェアと共に、今後は世界を廻りたいと思っています。
──東京フォトが提案する“写真をコレクションする文化”は、日本でも普及するのでしょうか?
写真の値段は絵画などに比べても非常にリーズナブルで、数十万円で世界的に有名な写真家の作品が自分のものになるんですよ。本場のパリフォトでも100万円を超える作品はほんの一握り。安くはないですが、庶民の私たちにも決して買えない値段ではないと思います。ただ、90年代以降、現代アートの手段としてアーティストが写真を選択するようになってきて、買い手側もアートとして絵画作品だけでなく写真を買うようになったことで、写真の価格は徐々に上がってきています。その影響で、ヴィンテージの写真は今後さらに高騰するという見方もあり、実際に海外ではアヴェドンやアーヴィング・ペンの作品などはかなりの高値がついています。コレクション所有する喜びと投機というのは、アートでも写真でも共存しています。でも逆を返せば、現在活躍している写真家をもっと知り、次は誰だろうと探す楽しみもあるんです。お気に入りの作品を鑑賞するだけじゃなく、自分のものにする喜び、そして写真をより深く知る楽しみが東京フォトにはあるんです。
原田 知大
「TOKYO PHOTO」代表
米国イリノイ大学アーバナシャンペーン校卒業。10年間の滞米中にアーサーアンダーセンなどに勤務。帰国後、日本オラクルに勤務したのち、2009年 9月、国内初の写真専門のアートフェアとして「TOKYO PHOTO」を発足。第5回目となる2013年には、英国国立テート・モダン美術館やNYを代表するガゴシアン・ギャラリーをはじめ、森山大道、ウイリアム・クラインなどの出展を実現し、国際的評価を得ている。写真を撮る文化の根付く日本に「コレクションする文化」を浸透させるため精力的に活動している。
「TOKYO PHOTO 2014」
会期 10月3日(金)~6日(月)
時間 12:00~19:00(初日のみ~18:00)
会場 東京ビル TOKIA (西側ガレリア)
東京都千代田区丸の内2-7-3
チケット 一般 1,300 円/学生 1,100円/前売り 1,000円
※10月3日(金)のみ学生600円
http://www.tokyophoto.org/