2017.02.08
だいたい、夜遊びって何なの。
小誌編集会議で持ち上がった、“20代は夜遊びするの?” という話題。20代スレスレ、境界型ゆとり世代の筆者が「行かないですね。昼間にピクニックする方が楽しいです」と意見すると、30代半ば~40代で構成される編集部に、相容れない雰囲気が漂った。ほほう、これが世代間ギャップというものか。諸先輩方曰く、クラブ終わりの明け方の空の眩しさに、気怠いながらも達成感を感じるらしいが、私には全く理解ができない。そんな中、とりあえずクラブを行って見てこいという少々横暴な指示の元、今回体験取材を試みた。
同行をお願いしたのは、某有名私大を卒業後、大手不動産会社広報部に務める、25歳女性。絵に描いたような箱入り娘で、明日のために毎晩0時には就寝する身体のいたわり様も、今回の取材にうってつけの人物だ。
「取材なんて面白そう!」と好奇心旺盛に快諾してくれた様子から、彼女の育ちの良さを伺え、親御さんに少々の罪悪感を感じながら、夜のキケンな香りが漂う(…と思っている)某クラブへと向かった。
その道中、彼女に質問を投げかけてみた。
── 夜遊びはする?
「しないですね。抜けるとまずそうな仕事関係の飲み会以外で、遅くなることはほとんどありません。クラブは、友人に誘われて3回程経験がありますが、自ら進んで行くことはもうないと思います。翌日身体は怠いし浮腫むし、ナンパからの出会いに関しての期待値は低いので」。
── 同感。クラブに行く理由は何だと思う?
「音楽が好きか、テンション上げる非日常感が好きか、ナンパが好きかですよね。でもどれにしたって、他の方法での方が質の良いものを得られると思うので、私にしてみれば正直疑問です。とすると、おそらく質とかじゃなく包括的な高揚感を求めているのではと思います。こんなふうに言ってしまう私の態度、冷めてると思いますよね。(笑) これが属に言う、我が道を往くゆとり世代の思考です」。
P.M. 10:30
これはもしや、クラブに到着する前に結論が出たのではないだろうか…という思いに目を背けながら、現場に到着した私たちは、とりあえず乾杯した。ちなみに、クラブはアルコール飲料を提供できるという点とセキュリティ上の目的にて、免許証等の身分証明書を提示しないと入場できないのだが、荷物を最小限にしようと、危うく置いてくるところだったクラブ初心者の筆者は、それすらヒヤヒヤしたのだった。
辺りを見渡すと、20~40代の男女が、ライブハウスのように音楽を聞いたり、仲間内とお酒片手に歓談している。近くに居た方にクラブに通う理由を伺ってみると、好きなDJやイベントを追いかけていたり(30代女性)、仕事関係の知人/友人のコミュニティがクラブを好むため、社交場として利用していたり(40代男性)と、意外にも全うなご返答が。なーんだ…「女の子を落とせるから」とか、もっと不純な動機を期待していたのに、残念でならない。
P.M. 11:30
同行した女性もやはりつまらなさそうにしており、私たちの醸し出す場違いな雰囲気からかナンパもされず、取れ高に困っていたところ、「お姉さ~~~ん、乾杯しよ~~~~う!」と、20代前半の女性2人が絡んできた。
どうやら、クラブをハシゴして来たらしい。「酔っぱらって馬鹿になりたい」と話す理由を聞くと、昨日恋人にフラれたばかりとのこと。ナチュラル系のボーイッシュな服装でなぜか大きなリュックを背負ったまま、ヤケ酒でテンションを上げるこの娘の様子を見て胸が痛くなったが、馬鹿をしなければ辛い感情を克服できない真面目な娘が、独りでシクシク泣いて過ごすよりはマシなのかもしれないとも感じた。
A.M. 0:00
“夜”は、悲哀じみた顔も、寂しさなどの感情も、暗がりの中にそっと隠すことができるのである。彼女のように、クラブのような場を必要としている人も居て、何の問題解決にもならずとも心のバランスを保つ場ともなっていることに気づくと、何も考えずに音楽に乗るこの場が、少し心地良くなっていた。