2016.02.20
「モテる女のタイプって、明らかに変わってきてるよね」
先日、友人たちとバーで飲んでいる時、一番仲のいい奴がおもむろにそんなことを口にした。男同士(独身既婚問わず)で集まると、会話の中身はたいてい仕事の近況や金儲けの話が先にあって、途中いろいろな話題を経て、最終的には異性関係や色気話で盛り上がってお開きになることが多い。
その夜も、いつものように「最近こんな子と逢った」「あの女とこんな顛末があった」「こういう性的な願望がある」なんて笑いながら話していると、冒頭の一言が冷静に挟み込まれたのだ。以来、この言葉が頭から離れなくなってしまった。
その時は「今の混沌とした時代のせいだろう」「いや、俺たちが年を取ったからだよ。ハッハッハッ」と結論づけたような気がするが、考えれば考えるほど深みにはまっていく。
確かに大人の男には、「顔面偏差値が高くて、スタイルが良くてグラマーで、明るくて健康的で、性格も育ちも頭もいい子がいいな」という、おめでたい願望は一切ない。そんな絵に描いたような女は絶対にいないことなど、自らの人生経験で百も承知だ。
これは自立した女が「イケメンで背が高くて、学歴も家柄も良くて、しかもお金持ちがタイプです」などと心の奥底でちょっぴり思っていても、間違っても人前で軽々しく口にしない世間体のようなものと似ている。
逆にこんな理想を追求したままでいる限り、「女は美、男は金がすべて」みたいな東京ワンダーランドの悪夢から救済される日は永久にやって来ない。行く末はセレブ気取りの美魔女か虚業に手を出す輩になるのがオチだろう。繰り返すが、“きっとどこかにいるはずのあの人”はこの世に存在しないのだ。
“誰かの愛人”に間違えられたらヤバイ要注意!
話を元に戻そう。草食系とは縁のない大人の男たちが思う「モテる女」とは? まずは周囲の見解に耳を傾けてみた。
「経済観念がしっかりしてるから、地味で真面目な女の子がいい。この前、そういうタイプの子とデートしたんだけど、レストランの代金を割り勘にしようとするからビックリした。で、日曜どこ行きたい?って尋ねたら、『一緒にゆっくり公園散策したい』って言われて。何か可愛くなってきてさ。大切に付き合おうと思う」
「今は結婚しても夫婦で働くのが当たり前の時代なんで、それなりの稼ぎがある女性がモテるんじゃないですかね。あと、どんなに見た目が好みでも、物欲的に依存してくるような女性は敬遠される傾向にあると思います。サラリーマンの自分に、クリスマスにン十万もするブランド品ねだってきた子がいたんですが、将来を破壊されそうなのでその後速やかに別れました」
超高齢化社会がすぐそこまで迫り、親からも老後資金の大切さを説かれている男たちには、バブルのような宴の価値観はとても受け入れられなくなっているのだろう。また、男たちがどうしようもなく好きだった見た目が巻き髪の女子アナ風やモデル風が甘やかされる時代はとっくに終わったようだ。
「派手な男が激減したので、そのぶんその種の女子も減ってますよね。今の時代、見た目があまりにキラキラ系だと、『この女、金かかりそう。高価な物品を買い与えてる何者かが背後にいるはず』って警戒しますね。SNSの生活自慢系の投稿見てりゃ分かりますよ。申し訳ないけど、“誰かの愛人”にしか見えない」
プロの意見も聞こう。20年以上に渡って婚活パーティーを見つめ続け、現在はプレミアムステイタスパーティー(www.statusparty.jp)を運営する有井清次社長は、「パーティでモテる女性のタイプは明らかに変わってきた」と指摘する。
「バブル時代のモデル、レースクイーン、イベントコンパニオンなどに象徴されるような華やかで派手な女性より、普通の仕事をやってる清楚で可愛いらしい感じの女性がモテる傾向はありますね。以前と違って婚活をする方の年齢層が低くなっていますし、相手を探していることを恥ずかしがる人も減りました」
女たちよ、東京ワンダーランドの呪縛から自由になれ!
かつてモテ職業の代表的存在だったCAはどうか? 男たちは「昔に比べて可愛い子が少なくなったと思う」と口を揃える。この点は現役CAでさえ同調する。
「スチュワーデスと呼ばれていた時代までは本当に綺麗な人が多かったよね。私たちの頃になると給料はすでに普通だったけど、名残の影響で『モテたいからなりました』って子が結構いた。制服マジックっていうのがあってね、普通の子でも3割増でいい女に見えるから(笑)。そういう意味で今CAになるのは、なりたいからなるって子が増えてるのかも。モテたい子の目指す職種が変わってきたんじゃないかな」
日本の就活シーンは深刻な問題を抱えている。学生時代のうちからきちんとキャリア醸成を考えていかないと、このままではそれを当たり前としている世界に差をつけられる一方だ。モテる・モテないだけの判断基準で職業を選ぶのは、これもまた「女は美、男は金」の東京ワンダーランドの呪縛に過ぎない。
商社マンと結婚して、現在シンガポールに住んでいる知人は、現地でのママ友事情を明かしてくれた。
「欧米人は自分の意見をしっかりと口に出す人が多いし、中国人の奥さんとかめちゃパワフル。私みたいな控え目な日本人は孤立することも。妻の存在感で主人の評価も左右されるから、結構焦ってる(笑)。キャラ変えなきゃ世界とは戦えないって思った」
内面の強さやブレない意見を持つことも、これからのモテる女の秘訣というわけだ。これは事業などが成功してリッチになった男たちの発言からも伺える。
「明らかにお金目当てで近づいてくるのがいるんですよ。だから見向きもしません。自分の要求ばかりしてきますし、学ぶべきことがまったくないですから。確かにそういう子を連れ歩くのが好きな男もいます。でもそもそもお金で買える関係として成立してますから、人として気を遣っているのかは不明です(苦笑)」
自分をよく知っていてセルフマネジメントしている女性は、別にハイキャリアでなくたって十分に魅力的に映る。「自分にしか心が向いていない」「自分さえハッピーだったらそれでいい」的な内向き思考は、どんなに顔面偏差値が高かろうが醜い。
これからは「困っている人のために自分は何ができるのか」「世の中に自分はどんな役に立てるのか」のような外向き思考こそが、茨の道に踏み込んだ日本、そして東京の未来を担う本当の「美」や「モテ」と言えるのではないか。