2017.01.31

vol.15 TOKYO NEXT
2017年、恋したいあなたに。 映画「男はつらいよ」に学ぶ 寅次郎の恋愛処方箋  Lessons About Romance by Tora-san

2017年、あなたは恋をできそうですか?

恋愛はするべき→したい→できない→したくないの時代になりつつある。最近では恋愛や結婚をしたくない若者が全体の4割を超えると言われ、その理由はフラれるのが怖い、面倒くさい、コスパが悪い、自分の時間が惜しいなど様々だ。
恋愛は果たして人生にとって無駄なのだろうか。

そんな疑問に体を張って応えてくれるのが、あの寅さんだ。
映画『男はつらいよ』の主人公として知られる、昭和を代表するキャラクターだが、その寅さんが多くの名言を残していることをご存知だろうか。これまでにも、語録やCDなどがいくつもリリースされており、中でも、恋愛に関しては現代人の心にも刺さる珠玉の言葉が数多く残されているのだ。日本人らしいチキンなハートを持ちながらも、果敢に恋をして、大いに勘違いをし、木っ端みじんにフラれながらも、相手の幸せを願う姿、そしてそこから生まれる言葉たちに、現代女子はきっと胸を打たれるはず。
そこで、今回は『男はつらいよ』関連の書籍やラジオ番組なども手掛ける娯楽映画研究家の佐藤利明さんに、寅さんの恋愛遍歴とそこから生まれた名言や恋愛観についてお話を伺った。

改めて観たい名作『男はつらいよ』


── 佐藤さんが『男はつらいよ』の研究をライフワークとされたきっかけを教えてください。

僕が6歳になったばかりの頃、『男はつらいよ』の第1作を家族で劇場に観に行って、幼な心に衝撃を受けました。渥美さんのセリフ回しが面白くて、寅さんというキャラクターが当時でいうバカボンのパパや、おそ松くんなどの漫画のようで、すぐにハマってしまいました。僕が寅さんの口上を真似していると、父がそれを面白がり、2カ月後に公開された第2作『続・男はつらいよ』にも連れて行ってくれ、そこからは全作劇場に観に行きました。僕は『男はつらいよ』の現場を見たいあまりにメディアの仕事に就きましたし、第41作で初めて現場取材を行い、第47作では映画パンフレットを作らせて頂き、夢も叶いました。現在でも娯楽映画について執筆していますが、『男はつらいよ』は全作ずっとオンタイムで見届けることができた唯一の映画シリーズという意味でも、僕にとってはとても重要な作品です。

── 佐藤さんが感じる『男はつらいよ』の魅力とは?

ひとつ挙げるとすれば、“共感”の映画ということです。他の映画もそうですが、『男はつらいよ』は特に、自分が感じたり、考えたり、気付くのを待っていてくれる作品です。昭和44年から平成7年まで続いたシリーズではありますが、古い映画だという認識がいつの間にかなくなって、その世界の中に入れてしまうんです。寅さんの寂しさ、さくらの切なさ、おばちゃんのやさしさ、自分がどうしていいか分からない時に、ケンカや勘違いをしてしまう。善意からくる人と人のぶつかり、近しい存在が故の気づかい、そういうところを自分の家族や親せきとの関係にクロスオーバーでき、共感することができるんだと思います。

── 家族や人生、そして恋愛においても、その共感は得られますよね。

映画シリーズ全48作と特別篇のなかでは、寅さんの恋愛観や心境にかなり変化がみられます。’70年代の爆発的なブームを支えてきたのは、奮闘努力のかいもなく失恋を重ねる寅さんに共感する男性ファンたちで劇場はあふれていました。しかし、かつて僕が構成作家とパーソナリティーを務めていたラジオ番組『みんなの寅さん』(文化放送)では、平成生まれの“寅さん女子”から多くのメッセージが届きました。寅さんは時代を経てもなお、様々な形でみなさんの心の中に生きているんだと思います。そこで、寅さんの恋愛観が世代や性別を超えて支持される理由を、いくつかの作品と名言から解説していきましょう。

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