2016.06.16
理科と数学(算数)をテーマにした“体感型デジタルネットワークミュージアム・リスーピア”。とは、一体何ぞや?本来は小学校3~4年生から中学生を対象にした内容だそうで、週末は満員御礼、行列のできる展示物も多いだけでなく、大人も熱狂しているとかしないとか。本当に大人でも楽しめる場所なのだろうか?
というわけで、専門家中の専門家!横浜国立大学の工学研究員・理工学部准教授、理学博士のレービガー・ハンネスさんにご同行頂頂いて『リスーピア』の面白さの真相に迫ってみた。
キッズに混ざって、ミュージアム探検スタート!
ミュージアムは2フロアから構成されている。2階の“クエストフロア”なる空間には、振り子、立体の体積、重心とモーメント、モーターと発電機、放物線の焦点などの原理モデルや宇宙や環境、地球温暖化など展示にはない約100種類の映像と40種類の数学パズルが楽しめるインタラクティブVOD(ビデオ・オン・デマンド)など、3階の“ディスカバリーフロア”には17の体感型展示物がある。
キッズたちの間を縫うには、目立ちすぎのハンネス先生。とはいえ、先生同様、編集チームも気がつけば夢中になっていた次第(キッズたち邪魔してゴメン)。で、数ある中から最も心を奪われたベスト5を大プッシュ!
No.5
巨大キャンバスの塗り絵に幼心がムクムク
~『ライトキャンバス』~
「ライトキャンバス」とは、R(赤)G(緑)B(青)の光の三原色を学べる展示。線画のモチーフに、自由に色を組み合わせて乗せていくのだが、言ってしまえば“巨大な塗り絵”。学んでいるという感覚はゼロ。純粋に楽しい。私たちがトライしたのはてんとう虫。絵とはいえ、てんとう虫の姿を見たのがあまりにも久しぶりすぎて、赤いランドセルとか遠足の風景とか、小学生の頃の記憶がランダムによみがえった。
No.4
数学アレルギーもゲームなら大丈夫!
~「ファンクションシューター」~
シューティング感覚で関数と式について学べる「ファンクションシューター」。見覚えはあるがY=1/5×2と言われても、数学が大の苦手な筆者にはもはや何を意味するのか正直本気で思い出せない。でもこの展示では、画面上に次々と表れるグリーンのマークに焦点を合わせてシューティングするとスコアが加算されるという、いわばゲームだ。正解、不正解など難しいことを考えずにバンバン撃てば、まぐれで当たることもあるし、「関数って、式って、そういうことだったのね」と感覚的に腑に落ちてくる。むろん、ハンネス先生は頭を使ってやっておられたが、数学がニガテな人でも抵抗なく入っていける。自然と集中している自分がそこにいるはず!
No.3
京都・法隆寺の屋根瓦の仕組みが分かる!
~「サイクロイド曲線」~
物理学者のアイザック・ニュートンが説いた、かの有名な「サイクロイド曲線(最速降下曲線)」が分かる仕組みがこちら。4つの異なる角度と距離の曲線上にボールを置き、ダイヤルを回すと転がっていく。「これは力学の講義でも出てきますよ」とハンネス先生。
展示物のそばにある「アンサーボード」には、同じ原理や法則を使った身近な例も紹介されている。引き出してみると、えっ?京都の法隆寺の屋根瓦にも使われていたなんて。雨が最も効率的に落ちる構造らしい。何度も訪れているのに知らなかった。茫然自失。学ぶこと多し。
No.2
ゾロ目が出るまでサイコロ振らせて!
~「ミラクルカウンター」~
「ミラクルカウンター」は、10個のサイコロを振り、ゾロ目を出す確率を体験できる展示。この時点での累計は1,054,479回。ハンネス先生の結果は、これまでに3人に1人の確率で振り出される稀少な組み合わせだった。ボタンを押してサイコロを振る。ただそれだけの単純動作だが、コロコロと目の変わるサイコロを見ていると無心になれる。それとは対照的に、振るたび瞬時に表示される確率数字のハイテク感にも魅了された。
No.1
手に汗握る、数字との格闘技!
~「素数ホッケー」~
「素数ホッケー」は、次々と流れてくる素数以外の数字をスマッシャーで打ち返すことで得点を競うエアホッケー。叩いた数字は最初の素因数ともうひとつの商へと分解されるので、打ち返すごとにスピード感が増していく。制限時間は1分。「多分、高校生が一番強いでしょうね。入試直前なら、いい記録が取れそうです」と今日一番、真剣な表情を見せたハンネス先生。筆者にとっても、今年に入って最も集中したのではないかと言える緊張感に満ちた時間だった。いかに普段が散漫か。あっという間だったが、自分を省みる貴重な経験にもなった。
ちなみに素数ホッケーを含む3階の展示物は、リスーピアのウェブサイト上でも体験できる。本物に優る感動はないが、頭の体操&リフレッシュになるだろう。ただ、素数ホッケーに関しては、ウェブ上でも(楽しすぎて)中毒性が高めなので要注意!原稿そっちのけでのめり込み、一日を終えてしまった愚者がここにいる。
結論!理学博士も太鼓判!
大人も楽しめる理数の立体授業!
「展示物はどれも素晴らしいと思います。冗談抜きで、うちの物理実験よりもいいかも(笑)。学部生たちをぜひこちらに来させたいですね。体験レポートを書かせたら、面白いんじゃないかな」とブルーライトに照らされて、いささか宇宙的な趣のハンネス先生。この円形状のマップは“キャンプ”と呼ばれるもので、入場時の渡されるディスカバリースコープ(携帯情報端末)をかざすと、その日の展示体験履歴が一望できる。
熱中、集中、夢中。いつの間にか(頭の中だけだが)子供に戻っていた。そして子供のような心で体験した感覚は、ちゃんと記憶に刻まれている。今からでも遅くない。最近、頭が凝り固まってるなぁと感じる人はぜひ足を運んでみていただきたい。リスーピアは、酒場よりも刺激的。大人も楽しめる空間だから。
リスーピア(パナソニックセンター東京内)
http://www.panasonic.com/jp/corporate/center/tokyo/risupia.html
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