2015.09.09
- ARTIST
アーティスト自身による
自画絶賛 Vol.11
ニコライ・バーグマン
北欧・デンマーク出身にして、東京在住。国内外にオフィスや店舗、デザインスタジオを構え、世界の名だたる企業とのコラボレーションをはじめ、ウェディング、イベントなど、各地で華麗に活躍中のフラワーアーティストのニコライ・バーグマン氏。昨年、太宰府天満宮で行われた展覧会『伝統開花』では、陶芸品、着物、博多人形といった日本の伝統工芸品とのコラボレーションを実現し、大きな話題を呼んだ。
今年、9月22日(火)より、6年ぶりにシャングリ・ラ ホテル 東京で開催される展覧会『伝統花伝』を目前に、その心意気、日本文化に馳せる熱い想いやインスピレーション源について、ニコライ氏に語っていただいた。
『伝統開花』内での作品
──昨年の太宰府天満宮で開催された『伝統開花』では、巨大な扇子をモチーフにしたフラワー作品がとても印象的でした。日本文化のどういうところにインスパイアされて、あのような作品が生まれてくるのですか?
1998年に初めて来日して以来、古くから現代に至るまで受け継がれている日本文化に惹かれ続けています。あの作品については、「もし太宰府天満宮という大きなスケールの中で作るとしたら、どうなるか?」というところから始まりました。野外で作品の展示を行う時は、よりスケール感のある方が、より印象的になるかなと。そのアイデアを形にした作品のひとつですね。
──鳥居の前に飾られていた大きな球体のオブジェも同じ発想を元に作られたものですか?
そうですね。扇子の作品ほど大きくはないけれど、かなりのサイズです。鳥居をくぐって、神社に入る前に、“立派なお出迎え”で来場者を迎えたいという気持ちから、高級な胡蝶蘭を使い、すでにそこにある建物との一体感を意識しつつ、カラフルに仕上げました。
──縁起が良くて、ニコライさんのお花にも拝みたくなりました。
そうだとしたら、嬉しいですね!太宰府天満宮に関しては、場所自体がすごく印象的でした。初めて訪れた際、まさかここで自分の作品が展示できるなんて想像もしていなかったのですが、展覧会を開催することが決まって、再び訪れた時、また見方が違っていて、「こんなことができるかも。あれもいいな」と色んなアイデアが浮かびました。ロケーションそのものが十分にインスピレーションを与えてくれましたね。
──9月22日よりシャングリ・ラ ホテル 東京で開催される次回の展覧会『伝統花伝』について、お聞かせいただけますか?
ここ2~3年、伝統工芸品や美術作品など、さまざまな分野で活躍している日本の作家さんにお会いする機会が多くありました。三越で開催される伝統工芸部会展で人間国宝の先生方の器にフラワーデザインを施したり、先の大宰府天満宮での展覧会で現地の有名な作家さんとコラボレーションをさせていただいたことなどが、今回へと繋がりました。さまざまな作品を拝見するにつれ、伝統工芸をテーマにぜひ展覧会をしたいと考えるようになり、やっとこの度実現することになりました。
──すでに構想はありますか?
はい。スケッチしたり、頭の中ではイメージが固まりつつある作品もありますが、なにせ花は“生きもの”ですので、展覧会開催の直前までは自分の中で温めている感じです。ご覧いただく方には、「伝統文化とのコラボレーションによってこのような見え方にもなる」というフラワーアートの可能性を感じてもらえたらいいなと思っています。
今進めているのは、さまざまな“パーツ”を集める下準備なのですが、実は、この過程が非常に大事だったりします。どんな土台を使うのか、スポンジは? その他のディテールは?というように、花以外に不可欠なパーツを選んだり、集めたり…その繰り返しの毎日ですね。
──その作業を行いつつ、各作家とも連絡を取り合っているのですか?
そうですね。作品によってさまざまですが、自分が想像するパーツを取り寄せて、実験的に組んでみたり、サイズを変えてみたり。その途中で、「ニコライさん、こんな器があるんですが、どうですか?」と新たに作品の写真を送ってくださる作家さんもいらっしゃいます。そこで、いいなと思うものがあれば、ピックアップして、さらにパーツを探して、準備していきます。
──今回、コラボレーションする作家の中で、印象的な方はいますか?
昨年の太宰府天満宮の展覧会では、広大な和空間の中に、先生が作られた小さな人形と、僕のフラワーアートが共存しているという、ともすると異様なバランスを醸し出す展示を行ったのですが、今回もご参加いただく博多人形の人間国宝・中村信喬先生とは、不思議なご縁を感じます。このように、前作から次回作へのつながりって、実はたくさんあるんですね。「あれ?もしかして、この方は前回もコラボレーションしていたあの人じゃないですか?」と気づいてくれる方もいたりします。
──展覧会の期間中、パフォーマンスも行われるそうですね。
展覧会の中日にあたる9月24日に行います。パフォーマンスは、場所もガラッと変わって、シャングリ・ラ ホテルのレストランで、ディナーショー的に行う予定です。美味しい料理を楽しんでいただきながら、即興のライブみたいな感じでフラワー作品を制作する様子をご覧いただけます。ここでは、純粋にフラワーアーティストとしての僕を通して、花を楽しんでいただく内容を考えています。
──人が見ている環境で作る時、プレッシャーは感じませんか?
プレッシャーはありますが、楽しいです。その緊張感が好きですね。いいプレッシャーというか、ある程度の負荷がなければいいものは生まれてこないと思っています。わざと何も決めずに、ステージに入ることもありますが、プレッシャーがあるからこそ、新たな発想が生まれることも多々ありますね。
──ニコライさんから見た日本とヨーロッパの共通点って何でしょうか?
私の勝手な意見かもしれませんが、家具でも器でも彫刻でも、例えば100年くらい前の日本とヨーロッパを見比べてみたら、職人の技術へのこだわりが似ていたと思います。たとえそれがお金にならなくても、プライドと時間をかけて丹念に作り上げていく。その姿が共通していると思っていましたが、現代は違っています。かつてのように熱心に細やかな作品を作る職人は、ヨーロッパで数えるほどですし、多くの場合、過去の作品は残っていません。その点、日本は、今もそのスピリットを受け継いだ職人さんが多くいますし、素晴らしい作品が多く保存されています。日本の方にとっては、当たり前に思えるかもしれませんが、稀少な文化的財産の多くをヨーロッパのように失くしてしまったとしたら…、これほど哀しいことはありません。ぜひ、大切にしていただきたいなと思いますし、自分自身でもできることがあれば、取り組んでいきたいです。
──だからこそ、日本の伝統的な文化に惹かれたのでしょうか?
その通りですね。ひとつの作品を作り上げるのに、膨大な時間をかけて、なおかつその後も大切に扱うーこれは、今も昔も変わらず、長きに渡り受け継がれてきた日本ならではのやり方だと思います。今回の展覧会でも、作家さん達がどれだけ丹精込めて作っているのかということをそれぞれの作品の背景と共に、その素晴らしさを観る人にきちんと届けていきたいと思っています。このような作品に花を生けさせていただくことが嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。
──フラワーアートを通して伝えたいメッセージはありますか?
何かメッセージを発するというよりは、私の作るフラワーアートが、観る人たちの何らかのコミュニケーションのきっかけとなり、いい会話になって、想い出に残っていけたらいいなと思います。おそらく花を嫌う人はいないでしょうし、綺麗に生けてある花を見れば、「あ、キレイだな」という気持ちが自然に出てくるものだと思いますが、観る人が想像した以上の感動とサプライズがなければ、その人の記憶には残りません。
つまり、いくら本人が宣伝したところで、実感に勝るものはないと思います。例えば、たまたまどこかで食べたアイスクリームがびっくりするほど美味しかったとしたら、友達に伝えたくなりませんか?そして、これはどんな広告よりもそれはインパクトが大きいと思うんです。同じように、ひとつの作品を一緒に見て、驚いたポイントを互いに話して共有する。これが一番記憶に残るのではないかと。そういう可能性をたくさん作っていきたいです。
──今回の展覧会の見どころについて教えて下さい。
まず、花をご覧いただきたいというのがひとつありますが、もうひとつ、大切なことは、伝統を伝えるというよりは、観る人に伝統を感じて欲しいということです。素晴らしい日本の文化作品の数々をこれだけの大きなスケールで、しかも、シャングリ・ラ ホテル 東京という素敵なロケーションで、観て、感じることができるのは国内でも、いまだかつてない取り組みだと思います。今回、ご参加いただく作家さん達の作品は、本来ならば、なかなか一堂に会することのない貴重なものばかりです。花と器を一緒に楽しんで、体感していただけたら嬉しいです。
──最後にお聞かせください。ニコライさんのインスピレーション源って何ですか?
毎週出掛ける朝の花市場が一番楽しいですね。その日の30分前と後でも、置いてあるものが変わりますし、週ごと、季節によっても全然違います。季節の移り変わりを肌で感じられる特別な時間です。アシスタントは伴わず、僕は必ず一人で行くんですね。その日の朝4時から5時ごろまでは、自分にとって一番大切な時間です。
──お花以外には何がありますか?
アートやインテリアの雑誌や本は大好きです。今、自宅には500冊くらいあるかもしれません。あとは、旅ですね。毎月どこかに出かけています。ずっと同じ環境にいるのではなく、行ったり来たりを大事にしています。よく行くのは、故郷のデンマークやL.Aですが、日本国内でも福岡や鹿児島など色んなところに足を運びます。今年の9月30日に、お店がオープン予定なので、最近は韓国に行くことも多いですね。各地を周りながら、インスピレーションを受けています。
ニコライ・バーグマン フラワー アーティスト
デンマーク・コペンハーゲン生まれ。北欧のテイストと細部にこだわる日本の感性を融合した独自のスタイルを確立。シグネチャーアイテム「フラワーボックス」をはじめ、ウェディング、イベント、世界有数の企業とのコラボレーションを多数展開。東京・南青山のNicolai Bergmann Flowers & Design Flagship Store(ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップストア)をはじめ、国内外に拠点を設けワールドワイドに活躍の幅を広げている。
ニコライ バーグマン 公式ウェブサイト
www.nicolaibergmann.com
伝統花伝
2015年9月22日(火・祝)~25日(金)
10:00~19:00(最終日 16:00終了)
場所 シャングリ・ラ ホテル 東京 27階
展覧会入場料 チケット¥800(高校生以下無料)
<チケット販売>
Nicolai Bergmann各店舗
チケットぴあ
e+(イープラス)
シャングリ・ラ ホテル 東京
<期間中イベント>
フラワーパフォーマンス&ディナーイベント
9月24日(木) 19:00~21:00
ドリンク付きコースディナー ¥36,000(サービス料込、税抜き)
シャングリ・ラ ホテル 東京 28階 Piacere(ピャチェーレ)