2014.11.13
- ARTIST
アーティスト自身による
自画自賛 Vol.04
川上シュン
デザインとアートの、ちょっとした隙間
──なぜ里山十帖に?
はじめ、里山十帖のクリエイティブディレクターである岩佐さんからダイニングスペース、温泉への廊下、そして、特別ルーム1室にという作品の依頼があったんです。そして、ここに来てみたらば、古いモノと現代のミックスがあり、そういう意味でも僕の作品の意味性と一緒していると感じて、感動して思わず、全館の作品を手がけることにしたのです。
──アーティストと呼べるのか?
グラフィックデザイナーの延長線上に僕のアーティスト像があるとも思っているのですが、自分の理想を追いかけていくと、デザイン領域というよりも、アート領域としての方が理解しやすい。そう考えてアーティストとしての活動も行っています。
作品を買ってくれる人が現れることで、アーティストとして成立すると思っています。でも、売るために作品作りをしているわけではありません。あくまで自己表現です。僕の作品は、印刷物ではあるけれど、印刷技術を使った1点しかつくれない作品の成立を意識しています。伝統的手法で作られた金箔や銀箔の用紙を使ったり、特殊加工や特殊印刷など、誰でも真似できる技術ではありません。だから、すべての作品をエディションを2としています。自分とそして誰かのものとしての2点です。
──なぜ“和”のモチーフを?
僕は東京の深川生まれで、小さい頃から江戸文化が染み込んでいたんだとは思っています。ニューヨークかぶれだった若い頃からできるだけ海外に行くようにしていて、また、海外でのエキシビションに参加したりすることで、海外でどう受けるかということも考え始めたということもあります。
はじめは戦略的に日本的なモチーフを意識していたのですが、そう考えているうちに自分の中に存在していた江戸っ子の部分が突き動かされたのでしょう。
自分が深川生まれの江戸っ子だということを意識することで、たくさん見えてきたことがあり、また、誰にも真似できないことの一つにもなるのではないかと。祖父は、深川やお祭りを愛した人で、川並という木場の伝統を生きた人でもあったので、その影響も大きいと思います。
──これからもこの路線?
古来より日本の美術や江戸的なものって、グラフィックデザイン的に感じるものが多いと思います。浮世絵とか、日本画とか、平面的で。その視点で見だしてから、長谷川等伯、狩野永徳、雪舟などに憧れが生まれました。まだまだ、僕の作品は表層的だし、もっと掘り下げ、江戸っ子としての自分、東京生まれの現代っ子としての自分を投影させていくつもりです。
また、自分の作品と空間のマッチングも考えていきたいです。この里山十帖はその典型で、この場所にどんな絵を展示すべきか、この空間には何が必要かを考えながら作品作りをしました。こういうような空間と作品のバランスを考えながら、影響されながら作品作りをしたいとも考えています。
路線という意味では、アーティストとしてだけやっていこうとは考えていません。アートとデザインを行き来しながら、ジャンルやカテゴリーにおいても、自由でありたいと思っています。ブランディングやグラフィックデザイン、アートディレクターやグラフィックデザイナーとしての自分も、僕にとって自分自身の可能性を広げてくれる大切な部分です。僕の中でのアートとデザインは、お互いにいい影響を与え合っているように感じています。
里山十帖についてはこちら
川上シュン
1977年、東京/深川生まれ。artless Inc. 代表。「アートとデザイン」を横断的に考え、国際的に活動を行う。 「古典技法とテクノロジー」や「伝統美と現代的感覚」を織り交ぜ、一貫して目には見えない抽象概念を表現している。ADC: Young Guns 6、NY ADC、D&AD、カンヌ国際広告祭、The One Show、 London International Award 、NY TDC、Tokyo TDC、DFAA(香港)、グッドデザイン賞、Tokyo Interactive Ad Award 等、多数の受賞歴を持つ。
http://www.artless.co.jp
http://www.shunkawakami.jp
里山十帖の露天風呂に浸ってもトレードマークのハットをとらない(笑) グラフィックアーティスト