2014.09.01
愛すべき東京30代女子に捧ぐ。
小粋なお一人さまスポット
「お一人さま」と検索窓に入れ、Enterキーを押すと、「孤独に耐えられますか? お一人さま耐久性テスト」や「これだけはできない、お一人さまの行動ランキング」といった情報がトップに上がってくる。一人で行動することがあたかも“イタい”と言いたげな冷やかな見方もあるようだが、どうだろう? 電車には一人で乗るし、旅行だってするし、愛しい誰かが隣で眠っていたとしても、夢を見るのはいつだって一人きりではないか。
よくも悪くも、集団行動を好む、我々ニッポン人。だからこそ、一人で行動することが目立つ場にいると、「出る杭は打たれる」のごとく、ちょっと変わった目で見る人がいるのかもしれない。が、実際、昼夜問わず、「今日は一人の気分だから」と気の赴くまま、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲みにいき、自分のペースで日々を謳歌する東京30代女子は沸々と増えている。
お一人さまとは、つまるところ、心身共に自立した一人の人間のことではないだろうか。取材中、ふとそんなことを思った。正解、不正解はないだろうけれど、もし前者であれば、本当の意味で、成熟した30代女子が東京にも増えている証といってもいいのでは?
今回は、すでに“通”の人にも“これから”という人にもぜひ一度は訪れていただきたい4つのお一人さまスポットを紹介しよう。
丸ノうち
「学び恋して、酒呑んで」
ネオンが煌めく池袋の繁華街でとりわけ目を引く看板に書かれたこのフレーズは、店主の丸山裕久さんが考案したもの。ビビッドなオレンジの暖簾をくぐると、カウンター9席、テーブル8席の心地良い空間が広がる。
芽キャベツ、ちくわぶ、マッシュルームなどの具材をたっぷり煮込んだ自家製ヘルシーおでんが看板メニュー。こだわりの焼酎・日本酒・ワインのほか、埼玉県越生(おごぜ)発・“すてきなシリーズ”の「すてきな桃酒」、「すてきなシークワーサー酒」や八海山の原酒で仕込んだ梅酒など、和リキュールも豊富にそろっている。
お客のほとんどは30代前後で、カウンター席すべてがひとり飲みのお客で埋まるほど、“ひとり飲み率”の高い店だ。中には週4ペースで通う常連さんもいて、ひとり飲み同士の間で、恋が生まれたこともあるとか。平日は午前2時、金曜と土曜は午前4時まで営業。仕事帰りはもちろん、もう一杯飲みたい時にも気軽に立ち寄れる穴場的スポットだ。
餃子とタパス 雷紋
ニンニクを全く使わず、シナモンや八角などのスパイスを盛り込んだオリジナル餃子と自然派ワインの絶妙な組み合わせがたまらない雷紋。オープン1年にして、すでに一人飲みに精通している30代女子の間では人気沸騰中のお店だ。
酢やしょうゆを使わず、生のグレープフルーツと白だしをブレンドした自家製のタレにつけていただく焼き餃子は絶品。パクチーたっぷりの水餃子は、オーストリア産のカボチャ種オイルと麻辣のコンビネーションで、まろやかさと深みの中にピリッとくる辛さがある。飲食業に長年携わってきた食のプロである女性店長の大木章江さんが自ら試作、試食を繰り返した末に生まれた細やかな味は、やみつき必至の素晴らしさ。
半月ほど、パクチーの根っこを漬け込んだジンを使った“雷紋トニック”や、ワインバーならでは、脚なしワイングラスに注がれる冷or常温の日本酒など、ドリンクのチョイスや演出にも女性らしく優しいこだわりが感じられる。
テンテンテン(ten ten ten)中野店
「…」
三点リーダーのごとく、余韻を残すという意味合いから「テンテンテン」と名付けられたこの店の旨みは、32種類のワンカップ酒と女将さん。中野駅南口を出てすぐ、レンガ坂を上がった先、スナック街の一角という渋い立地もさながら、扇型のカウンターには8席限定という潔さ。
ワンカップ酒に加えて、栃木の“かぶとむし”や秋田の“刈穂”など、1杯90ccで楽しめる「本日のゲスト日本酒」のセレクトも粋。カキのスモークオイル漬けやさんま蒲焼山椒チーズの“缶つま”、鯖へしこ、ホセの塩辛などの珍味、加えて毎日7~8種から選べる290円のお通しなど、ワンカップ酒に良く合うメニューが揃う。
“女性が運営する女性のためのバー”として2003年末、新宿3丁目に1号店をオープンして以来、初台店に続き、晩酌処として中野に開いたこの店。いずれも女性店長が切り盛りしているせいか、初めて訪れたとは思えない温かみと落ち着きを感じる空間だ。それゆえ、お一人さまの女性客も多い。
「仕事のあとですか?その時々の気分で、場所を変えて、よく一人で飲みにいきますよ」という女将さん(オーナー)によると、主に30代後半~40代前半の地元客が訪れるという中野店。深夜のお一人さまスポットの聖地といえるだろう。
スターバックス 神宮前6丁目店
渋谷、原宿エリアでちょっと、ひと休みとか、仕事に集中したいなという時に、これ以上はないという隠れ家的スポットがここ。
渋谷と原宿のほぼ中間の明治通に面していながら、ビルの奥に位置するこのスターバックスは、わざと目立たなくしているのでは?と思えるくらいにひっそりとしている。しかも、奥には中庭的なテラス席も有るという、余裕な作り。特筆すべきは、“お一人さまソファ席”があることだ。スターバックスの独り用の席というと、窓際のハイカウンターというイメージだが、ゆったりと座れるソファがひとり用で用意されているのだ。
もちろん、wi-fi完備のスターバックス故にお仕事にも使えちゃうし、ゆっくりひとり時間を楽しむこともできる。
ある30代女子は言う。「カフェタイムは人とコミュニケーションを楽しむ時間でもあるけれど、時として自分自身とコミュニケーションするのも悪くないかも」と。
彼女の言葉にもあるように、カフェにしろ、バーにしろ、食事処にしろ、パブリックな場所で静かに自分と向き合える時間が持てるのも、東京ならではのライフスタイルではないだろうか。課題、欲望、はたまた葛藤。それらが引いては寄せる波のように次々と押し寄せる30代女子にとって、くつろぎながら、自分を凛と見つめ直すことができるのも、お一人さまスポットの醍醐味。
慌ただしく過ぎていく日々の一コマをぜひ活用してみては?