2014.08.05
今、ギャルの歴史の中でも「新人類」と呼ぶにふさわしい新たなギャルたちがじわじわと世間を賑わせている。その名も「ネオギャル」。名づけ親である雑誌『ViVi』編集部によると、これまでに存在したギャルたちとは180度違うという「進化系ギャル」としての主張も込めて、新大陸、最新という意味を持つ“ネオ”を付けて命名したのだという。まずは、彼女たちの代表的な特徴からご紹介したい。
こうして表層的な部分だけにスポットを当てると、スタイルが変わっただけの今どきのギャルに思えるかもしれない。でも、ネオギャルが、歴代のギャルたちと決定的に違う点は2つある。
1つは、女子高生といった年齢層のセグメントで一括りにはできない人種であること。彼女たちの中には、19歳のアパレル販売員もいれば、23歳の下着販売員や24歳の自営業者もいる。(カテゴライズするのが好きな日本人であるがゆえ、むりくりにまとめるとしたら、この場合、20代前半ということになるだろうが)中には誕生日をじき迎える26歳のOLもいたりして、まさにバラバラなのである。唯一、共通項としてわかったのは、大学生よりも、契約社員だったり、フリーター的な職業に就いている子たちが多いということだ。
2つめは、スタイルの前にれっきとしたマインドがあるということ。ただ単に有名だからといって、彼女たちは両手放しで誰かを崇拝したりはしない。海外セレブについても、雑誌で大きく取り上げられているからという安易な理由で、その人物がオシャレだとは決して認めない傾向にある。そんな中、ネオギャルのロールモデルとして支持されているのが、FIG&VIPERのブランドプロデューサー、植野有砂だ。インスタグラムのフォロワーは全世界で12万人越え。台湾や韓国をはじめ、彼女のスタイルやマインドに共感するファンたちは、日本のみならず、圧倒的にアジア圏に多いという。今年1月に刊行されたオフィシャルブック『#ALISA』(*1)の発売とほぼ同時に、海外ファンが表紙のポートレート写真を緻密に描いた似顔絵がSNS上にアップされ、炎上間際の大反響になるなど、なにせ熱狂的なのだ。
かといって、ネオギャルたちが彼女をアイコンとして認める理由は、そうしたファンたちにちやほやされるからではない。ロンドン、L.Aなど、国境を越えた地のトレンドセッターたちとつながり、直に交流し合い、真にイケてるモノやコトたちを自分の嗅覚を頼りに探し当て、自ら身にまとう姿と自分の言葉で独自に発信しているからだ。人によっても意見はさまざまだと思うが、実際、オシャレなセレブが数少ないのも事実で、本当にオシャレな人とは、アンダーグラウンドに秘かにいたりするもの。つまり、生のトレンド情報源を持ち、それら全てを自分というフィルターにかけ、濾したあとに出てくる真の産物を世の中に堂々と提供する姿勢に共感が集まっているのだろう。
ここまでお伝えすると、恋愛事情を含める彼女たちのプライベートライフが気になるのでは?ギャルにはギャル男、アゲ嬢にはホストというように、かつてはベストマッチのカップル像が存在したが、ネオギャルに及んでは、これまた一括りにはできない。聞くところ、大多数は、「恋愛にさほどエネルギーを使っていない」ようなのだ。海外志向が強いので、英語を独自に学ぶなど、どうやら自分のことで忙しく日々を過ごすネオギャルたちが多いよう。とはいえ、美的感度の高いアパレル関係者や美容師など、分かち合える要素の多い男とステディに付き合う子たちも少なくはない。
遊び場についても、クラブやソニックマニアなどの夏フェスなどさまざまだが、先の植野有砂を例にとれば、今年日本にも初上陸するアメリカ最大級のマイアミ発「ウルトラ・ミュージック・フェスティバル」をはじめ、数々の海外フェスに先駆けて訪れているという。DJとしても活躍する彼女がひと声掛けると、国内でも、感度の高いネオギャルたちは一所に集まってくるのだそう。
流行れば廃る。今も昔も変わらない真理をなぞらえると、一時のブームだといえるかもしれないが、そもそもの話、ネオギャルの数はさほど多くはないらしい。正確な人数はカウントしていないが、「大集団」ではないことは明らかだ。これもまた、今までのギャルとは違う点ではないだろうか。本人たちが意識する、しないにかかわらず。今という時代の恩恵をふんだんに駆使し、言葉や国境という世界のあらゆるボーダーラインを優に越えながら、あくまでも自分というブレない軸で、物事を取り入れ、選び取り、発信することで自己表現している。その変幻自在なあり方は、東京発の新たな女の子たちの生き方の象徴かもしれない。
*1 #ALISA 植野有砂オフィシャルブック
2014/1/30発売
植野有砂 田口まき (著)
ギャンビット刊