2017.03.14
- Cafe Culture
Vol.13
“プアオーバー”とはなんぞや?
最近、コーヒー好きの間でよく聞くフレーズが“プアオーバー”だ。Pour Overとは、Pour=注ぐ、Over=上から、で。上から注ぐという感じだろうか。従来、ハンドドリップと呼ばれていたものと理解していい。では、なぜ新しい呼び方が普及し始めたのか。これはアメリカ発だと思うのだが、従来のドリップも、サイフォンも、プレスもまぁ、どれも機械ではなく人間が器具を使っていれることには変わりはないし、ハンドドリップの範疇に入るから、それと明確に区別しようということなのかもしれない、と勝手に想像しているのだ。
Drip=滴なわけだから、なんとなく理解できるのでは。
このプアオーバーに使われるペーパーフィルター、独特な三角形状のドリッパーは日本のメーカー製が世界標準になっているらしい。
ペーパーフィルターの二辺を折りドリッパーにセット。必要な豆の量をセット(基本は1杯分)し、豆全体に軽くお湯を注いで20~30秒蒸らす。その後お湯を注ぎ始める(ゆっくりと回すように=だからOverという表現なのだろう)。お湯が落ちきる前にドリッパーごと外す。この最後の部分はかなり重要だ。落としきるとコーヒー豆から出る雑味が加わってしまうからだ。ちなみに、筆者は、某Bという有名サードウェーブコーヒーで、プアオーバーをする若者が落とし切ったので、もう一度やり直してもらったことがある(笑)。
この日本では見慣れた光景も、アメリカでは今でこそサードウェーブや、スターバックスのロースタリーで当たり前のように見られるようになったものの、ちょっと前までは、マシンメイドのコーヒーがほとんどだった。日本にやってきた外国人達が、日本の喫茶店で儀式のように行われる、ドリップのワザに魅入られて、その辺がサードウェーブの原点になったとかならなかったとか。
ちなみにシアトルにあるスターバックスのロースタリー(2018年、日本にもできるらしい)では、プアオーバー/ケメックス/コーヒープレス/サイフォン/エスプレッソ/クローバーの選択が可能になっている。
閑話休題。
日本でペーパーフィルターがこんなにも普及したのは、コーヒーをいれるという行為の背景に茶道(=Tea Ceremony)の影響があるのではと考察してみる。お茶を点てるという行為の延長にコーヒーもあるのでは。最初はネルドリップだったのだろうが、取り扱いが難しいだけに、ペーパーフィルターの登場で一気に、コーヒー道が普及したのだろう、と。今でもネルドリップにこだわる喫茶店も多くあるが、ペーパーフィルターの簡易性や、安定した味は取って代わるに十分な強みといってもいい。じっくりとお湯を注ぐ行為。茶道ほどではないにしろ、十分に美味しいコーヒーを期待させるものだ。
挽きたてのコーヒーとドリッパー、そしてペーパーフィルターに加えて、もう一つ大事なアイテムがポットだ。通称スワンネックと呼ばれるプアオーバー専用のポットも重要。注ぎ口が細く注ぐお湯の量を調整しやすいという優れものだ。注ぐお湯の量をやや多めにして注げばすっきりとした味わいに、少なめでじっくり注げば濃厚に、とコントロールもできる。
コーヒー好きを気取るなら、まずはプアオーバーというフレーズをマスター。そして自宅にペーパーフィルターとドリッパー、スワンネックのケトルを用意することから始めたい。