東京銀座六丁目~Kazuquoママのカウンター越しの社会学~

2018.03.22

東京銀座六丁目~Kazuquoママのカウンター越しの社会学~
あなたはパズルのピースじゃない

あなたはパズルのピースじゃない!

最近の銀座ルームに異変が・・・。それは、以前よりもお客様の男子比率が高くなってきているってこと。女子を滅多斬りにしすぎたからかしら・・・?
素敵男子と絆を深めたい女子たちにとって、”男性性”を理解することが課題ということは、今までのコラムでお伝えしてきました。女子たちがあたしに気軽に話す本音。確かに理解できる。でも、一方でその話を男性的思考回路、男性的心理で聞いてしまう自分がいるの。
「かずこ〜、今度旅行行こうよ〜」「かずことだったら、一緒に泊まれる〜」
なんてお声がけいただくこともあるのだけど、もちろん
「いく、いく〜!」
と楽しく旅をする女子もいれば、
「お前となんか絶対にいかねーし。」
と思う自分が叫びたくなる女子もいるの。

男らしさ、女らしさ、どちらかを選ぶしかない現代?

「かずこって意外と男だよね〜」とか、「かずこって体は男子なんだから、荷物持ってよ〜」
なんて当たり前に言われると、あたしの中の男性性が「カチン」とくる。
「都合のいいときだけ男子扱いすんなよな!」
とこんなあたしも「いらっ」と来ることもあるのよ。
こんな風に、せきららな女子の本音と、男性的心理のミスマッチを感じるからこそ、少しでも21世紀の男性と女性をマッチさせられたらと思い、このコラムの連載を引き受けたの。銀座ルームに男性客が増えているのは、あたしが男性心理を理解できるからなのではないかしら?とか言っちゃって・・。

たぶんですが、あたしは、女性系の脳の構造で生まれていると思います。しかし、あたしは、男性として育てられ、男性として教育を受け、男性的思考、男性が背負うべき役割、責任とは何かを何年もの年月をかけて訓練されてきたのです。なので、ふたつの機能を瞬時にスイッチして行動する術を身につけています。そんな状況下で思うのは、男性が背負っている「ジェンダーロール(性別による社会的役割や行動様式)」がやはり重いというもの。結婚をし、子を持ち、家族を養い、満足させるだけの収入、社会的ステータス・・・有事の際は、常に女子供の先頭に立ち・・などなど。このプレッシャーって結構きついのよね。

以前の社会では、性のカテゴリーは「男性」「女性」しかなかったけれど、欧米を中心に、日本など一部の現代社会では「男性」「女性」「ゲイ」「レズビアン」「トランスジェンダー」など若干増えてはきていると思うの。でもまだまだ宗教上、政治的、社会慣習的な影響が強い生活圏では「男性」か「女性」のどちらかでしか生きられないと思います。もちろん日本もね。
 自分が「男」か「女」か。そんなふたつのパズルのピースになって、自分がはまる場所を探す。そうせざるを得ない現代社会。確かに社会のルールにはまったほうがスムーズに生きられる面もあるのも事実。でもその社会のルールというパズルのピースになることがいかにばかばかしいかということも考えてほしい。

我慢して生きたら、その結果は幸せなのか

あたしたちの世代は、この二つに無理やりハマらなければならなかった。たとえば、最近あたしに「ゲイ」であることをカミングアウトした人たちの話。適齢期になると親族、会社などの社会的体裁、プレッシャーにより、無理やり結婚をして、子供を持った。妻は自分の子供が生まれると、その子供は旦那の何千倍もかわいい。すると男は、自分たち母娘に資金を供給する資源として扱いはじめる。そして念願のセックスレス状態!その後、ひたすらその体裁を維持するために、社会的パズルの1ピースとしての役割を全うし、子供が成人したころになると本来の自分に出会うべく「ゲイバー」通いや「出会い系サイト」に熱中するようになり、遅咲きの人生を謳歌しているが、愛のない妻との共同生活は苦痛の種。彼はやはり結婚を優先したことを後悔しているというの。
「確かに子供は愛おしい。結婚してよかったことは、子供に出会えたこと。子供が巣立った今、まったく愛情もない妻と一緒に暮らすことが苦痛でならない。離婚することがこんなに大変なことだとは知らなかった。」と漏らします。「でも、親や同僚に疑われたり、差別されることなく生きたのだし、そもそも、他者にどう思われるかを優先して生きることを決めたのは自分なのだから仕方ない」と。

「背負う男と支える女」になるのか、やめるのか
決めるのは自分

「男らしさ」「女らしさ」とは何か。あなたは現代社会パズルのピースじゃない。自分の形を無理やり変形させて、社会のパズルのピースにならなくてもいいのよ。無理やりパズルピースになっても、その窮屈さは必ずいつか爆発する。昨今の未婚率や離婚率の上昇。出生率の低下。これは、単に産休、育休の確保、保育所を増やせばいいとか社会インフラの整備の問題だけではなく、そもそも論として「押し付けられたジェンダーロール」からの解放が始まっている予兆なのかしら?なんて感じるあたしもおります。
 いわゆる「ゲイ」ではないけれど、女性の要求を背負いきれず、恋愛や結婚を遠ざけている男子がいる。そんな殿方の弱い部分を理解し、彼の良い部分が自分にかけがえのないものと、彼の弱い部分を肩代わりして素敵な結婚生活を送っているカップルがいるのも事実。確かに
「女なんだから家事を完璧にやれよ!」
とか
「家のことは任せてるだろ!」
みたいに、女子に「女らしさ」を押し付ける殿方もたくさんいると思うけれど、そんなバリバリマッチョイズムな殿方と結婚したいと思う女子なら一歩大人になってあげなきゃね!
新しい時代の扉が開くまでもう一息。婚姻制度、戸籍制度なんて社会管理をしやすくしているに過ぎないわ。「背負う男と支える女」というパートナーシップだけではなく、「背負う女と支える男」、「ジェンダーロールを超えた男女」、あたしのように、「男として生き、女心で男を支えるあたしと頑張る男」なんてパートナーシップもありだし、「背負える男同士、女同士」なんてのもあり。もちろん、二人ではなく、信頼できる友人、素敵なコミュニティで大勢で生きるのもありなんだから!親や兄弟、同僚、同級生、そんな人たちにどう思われるかなんてはやく関係ない時代になっちゃえばいいのに〜。何でもありありよ!自分が心地よいと思える人と共に生きる。それが実現したらどんなに、どんなに幸せなことかしらね。

人は孤独や寂しさには弱いもの。やはり誰かと繋がっていることは生きる根底を支える重要な要素だと思うの。男だからってすべてを背負う必要はないし、女だからって自分を制限する必要もない。それぞれの自分らしさが共鳴し合うパートナーや友人、コミュニティと出会えればいいだけの話。「結婚」という形だけではないということを覚えておいてもいいかもね。
あたしは、カウンター越しに社会ルールのジグゾーパズルに窮屈さを感じる人々の自由人への案内人として、今日も明日も明後日もお客様を見守っております。あたしの親愛なるトランスジェンダーの友の言葉。
「自分は自分以上でも自分以下でもない。」
せっかく生まれてきたのだから、かけがえのない「自分」という財産を大切にしてほしいですね。

(Text:かずこママ)
(Illustration:瓶子可南子)

かずこママ (Kazuquo)
栃木県宇都宮市出身。大学卒業後、自治医科大学付属病院にてリハビリテーション医療に携わったのち、 福祉住環境開発のために、住宅メーカーへ転職。その後独立し、PR会社、VIPトラベル専門の旅行会社「コスモクラーツトラベル」などを経営しながら銀座の会員制バー「銀座ルーム」のママとして日々、銀座のカウンター越しに社会情勢を見守っている。
かずこママの本が、集英社クリエイティブより発売中! 東京銀座六丁目 僕と母さんの餃子狂詩曲

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL