映画と音楽のオイシイ関係

2018.11.08

映画と音楽のオイシイ関係
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

<クイーン>の魅力、実力を再実感する
『ボヘミアン・ラプソディ』

前回に引き続き音楽映画なので、そもそも『映画と音楽の関係』を語るまでもないのだが、「好きじゃない人っているの?」ってくらいみんな大好きな<クイーン>を描いた映画となれば、紹介しなくては気が済まない。すでに巷で話題沸騰の『ボヘミアン・ラプソディ』だ。

マイ・ファースト・<クイーン>体験は16歳まで遡る。と言ってももちろん生の<クイーン>のライブを観たのではない。(当時フレディはすでに故人となっていたし。)それは、私がその歳の夏を過ごしたカナダのカルガリーでのこと。地元の野球マイナーリーグの観戦に行った際、「セブンス・イニング・ストレッチ」(*7回表終了時にスタンドの観客が立ち上がって歌を歌い、体をほぐす)で、突然音楽が流れ出した。「ドン・ドン・チャッ」というサウンドに合わせ、観衆は総立ちで足踏みと手拍子を始める。リズムのみをバックに聴こえだす男性ボーカルの声。そしてサビで観衆もみんな一斉に叫び出す。“We will we will rock you!”

その後、私自身はロンドン・ナイトに通い始め、パンク・ロックやグラム・ロックやロックン・ロール…様々なロックの洗礼を受けのめり込んで行ったのだが、それもこの、初めて<クイーン>を聴いた時の衝撃が原点にある、と言っても過言でない。

フレディ・マーキュリーの底力

<クイーン>というと、どうしてもフレディ・マーキュリーの強烈な個性とセクシャリティばかり目につくが、音楽的に非常にレベルが高いバンドだと思う。ロックとかポップスとかディスコとかそう言ったジャンルの壁を悠々と超えるくらい、フレディは実に歌がうまいし、その歌声はなんともパワフルだ。彼がもっと過去の時代に生まれていたなら、優れたジャズシンガーやオペラ歌手にもなれたに違いない。

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. バンドの音楽性の高さやフレディのパフォーマーとしてのポテンシャルの高さだけでなく、一人の人間としての葛藤や純粋さを知ることができるのもこの映画の大きな魅力だ。それに加えて私がこの映画をオススメする理由は、<クイーン>の楽曲、特にフレディが書いた歌詞を、日本語字幕で十分に理解できるから。私たち日本人の英語の歌詞の理解度は悲しいかな、低いのは否めない。<クイーン>の音楽の素晴らしさは、派手なパフォーマンスや、ポップなメロディやキャッチーなサウンドだけではない。歌詞に込めたメッセージ性の高さを、この映画で実感することができるだろう。

特にラストのライヴ・エイドの21分に及ぶライブシーンは圧巻だ。数々の名曲の歌詞とフレディの生き様がリンクし、感極まって涙が止まらない。その場にいたらきっと、感動しすぎて卒倒していたと思う。

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. メンバーのブライアン・メイやロジャー・テイラーも制作陣に名を連ね、バンドのヒストリーが真摯に忠実に描かれているのも、<クイーン>が、途中衝突こそすれど、最後まで大切な絆を失わなかったバンドだからこそ成し得たことなのかもしれない。 「好きじゃない」なんて人はいないのではないか、と思ってしまうほど、世界中で愛され、音楽史にその名を刻んだ伝説のバンド、<クイーン>。けれど「好きじゃない」という人だって、誰もが共感できる何かがこの映画には描かれている。

(Text:akiko)


『ボヘミアン・ラプソディ』
11月9日(金) 全国ロードショー

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

▪️監督:ブライアン・シンガー
▪️音楽プロデューサー:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
▪️出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、マイク・マイヤーズ
▪️配給:20世紀フォックス映画
▪️公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/


akiko

ジャズシンガー
2001年、名門ジャズレーベル「ヴァーヴ」初の日本人女性シンガーとしてユニバーサル・ミュージックよりデビュー。既存のジャズの枠に捕われない幅広い音楽活動で人気を博し、現在までに22枚のアルバムを発表。これまでに「ジャズ・ディスク大賞」や「Billboard Japan Music Award」を始め、数々のミュージックアワードを受賞。2003年にはエスティー・ローダーより日本人女性に送られる美の賞「ディファイニング・ビューティー・アワード」を授与される。

アルバムプロデュースやコンピレーションCDの選曲、執筆、アパレル・ブランドとのコラボレーションなど多方面で活躍。また、ボイス・ワークショップの開催や、アーユルヴェーダやヨガのワークショップ、国内外でのリトリートツアーなども不定期に開催している。
デビュー15周年となる2016年にはアーユルヴェーダのコンセプトを元に5種類に分けた5枚組ベストアルバム「Elemental Harmony」をリリース。 音楽性やファッション性のみならず、そのライフ・スタイルにも多くの支持が集まる。
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