2018.07.06
- 映画と音楽のオイシイ関係
- ©2017 Broad Green Pictures LLC
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が再び!
90代のギタリストを筆頭にかつて第一線で活躍していたキューバのベテラン歌手や音楽家たちを復活させた1枚のアルバムが、世界の音楽シーンにセンセーションを巻き起こしたのが1997年。アメリカのギタリスト、ライ・クーダーがプロデュースしたこのアルバムは、グラミー賞を受賞し、ワールド・ミュージックのジャンルとしては異例となる400万枚を売り上げた。
そして名匠ヴィム・ヴェンダースが彼らの音楽と人柄に惚れ込んで監督したドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』はアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、ここ日本でもミニシアターの枠を超える大ヒットを記録した。
あれから18年。もうそんなに経ったなんて。まるでつい昨日のことのような気もするが、、、
グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた現メンバーが、“アディオス”世界ツアーを決行、ヴェンダース製作総指揮で最後の勇姿を収めた音楽ドキュメンタリーが完成した。それが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」だ。
©2017 Broad Green Pictures LLC
メンバーたちの音楽的ルーツやキューバ音楽の歴史とカルチャーが、美しい自然と共に紹介されていく。 嬉しいことにキューバ音楽の黄金時代だった1950年代の貴重な映像がところどころに挿入されている。少女時代のオマーラ・ポルトゥオンドが歌うキュートな姿や、イブライム・フェレールとの昔からの親交も、古いモノクロのフィルムにちゃんと収められている。
そして最も興味深いのは、苦労した時代を経て華々しい大成功を遂げた彼らの本音が語られていること。幼い頃からスターを夢見て一時は音楽を諦めさえしたイブライムの、「どうして(脚光を浴びるのが、歳をとった)今なんだ?」という言葉や、歌の中で語られている彼らの歴史や苦悩を知らずに「ブラボー!」と歓声を上げる観客に対し、感激と共に複雑な気持ちを隠せないオマーラ。
©2017 Broad Green Pictures LLC
そして18年という時がもたらした、避けることのできない死について。メンバーのうち半数ほどはすでに旅立っていった。カメラは死の直前までステージに立ち続けたその姿を美しく映し出す。