Editor’s Eye
2015.08.25
- Editor’s Eye
今、ジャカルタのデザイナーが熱い!
~Part1 ETU(エトゥ)が魅せるエキゾチック・エレガンス~
ETU(エトゥ)のデザイナー、レストゥ アングライニさん(上記)に会った時、映画「セックス・アンド・ザ・シティ2」に登場するアラブの女性たちのことを思い出した。漆黒のヒジャブに身を覆った彼女たちが、実はその布の下に、パリコレなどで発表されたばかりの最新コレクションをまとっていたことが分かる場面があるのだが、「これこそまさにオシャレの核心だ!」と心を打たれたことがある。むろんこれは映画の中での演出で、実際にヒジャブの中の姿を公にするのは、宗教上タブーなのだそうだが、人に見せるためではなく、純粋に自分を喜ばせるものとしてファッションを楽しむ心は素晴らしいと感じ入った。
「ヒジャブは、ムスリム女性である私のアイデンティティです。でも、これに似合う洋服を探すのは
中々、大変。だから自分でデザインすることにしたのです」とレストゥさん。ファッションスクールを卒業した2011年、ジャカルタ・ファッション・ウィークで華々しくデビュー。「当初から自分のブランドを作りたかった」という迷いのない姿勢、清らかな情熱は、大きく澄んだ瞳に表れている。ジャカルタを代表するデザイナーの一人として、メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京 2015-2016A/W参加のために来日した彼女に、お話を伺ってきた。
―ショーを拝見した直後、「エキゾチック・エレガンス」という言葉が思い浮かびました。
そんな風に言われると、とても嬉しいわ。エレガンスはETUが大切にしているエッセンスのひとつだからです。理想的なフォルムの中にエレガンスと大胆さを共存させることーこれは、デザインする時、私がいつも意識していることです。2015年秋冬シーズンのテーマは、「FEMME DE LA CRÈME」。夢見ることに常にとても情熱的な、とある女性についてのストーリーです。とはいえ、彼女は人生において完璧さを求めているわけではなく、「何が素晴らしいのだろう?」と考えながら生きている市井の女性。「大胆に、たくましく、楽しげに、自分らしく生きるために」を体現する女性像を思い描きながら作ったコレクションです。
―“コントロールの効いた筒型シルエット”で構築的にかつ優しく女性の体を包み込んでいる。そんな印象を受けました。
ヒジャブ自体、女性らしさの象徴として身に付けるものなので、フェミニンなオーラはそのまま生かしつつ、メンズウェアの構築的なシルエットやキャメルブラウン、ベージュなどの落ち着いた色味を取り入れることで、現代的なバランスとシルエットの実現を心がけました。メンズウェアから着想を得たのは、ムスリム女性が、ボディラインを主張することが禁じられているからです。清潔感があり、シンプルであること。私はこれをETUにおける“謙虚さ”と呼んでいます。
―特にこだわったのはどんなところですか?
先に挙げた謙虚さとクラフツマンシップとの融合です。今回のコレクションでは、美しい手織りの高密度素材とねじった素材をパネルで重ね合わせたり、襟や袖などのディテールに、シンプルな幾何学模様のオーガニックモチーフと細やかなパイピング素材を組み合わせるなど、繊細なコントラストの表現にこだわりました。これらは、優れたテクニックを持つ職人たちとの実験的な試作を繰り返したゆえの賜物です。
―今回、初来日にして、メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京でコレクションを披露されましたが、ジャカルタでのファッションウィークと大きく違うと感じたことはありますか?
ジャカルタではショーの開始時間が遅れたりすることもよくあるのですが、東京では、すべてがオーガナイズされていて、驚きの連続でした。私を含めたジャカルタのデザイナーたちが到着するやいなや、スタッフの皆さんは一丸となってすぐに動き出してくれました。チームとしてコレクションを作っていく中、それぞれの人が自分の役割を熟知していて、協力的で親切に接してくれることに感動しましたね。現地では、指示したことができていなかったり、へクティク(てんてこまい)になることも多々あり…というのが現状なのですが、今回は順序的にスムーズに行うことができて、感謝の気持ちでいっぱいです。
―東京についてどう思いますか?
すごくキュートでユニークな街という印象です。インテリア、ショップ、ディスプレイ…すべてが可愛いです。渋谷のワンルームマンションに滞在していますが、小さな間取りの中にも、必要なものが何でも揃っていて、とても快適。効率も良いですね。
―今後の展望は?
10月に開催されるジャカルタ・ファッション・ウィークに向けて、製作を進めていく予定です。今後、日本での商品展開も視野に入れて動いていきますので、皆さん、どうぞよろしくお願いします!
「眠る時以外は毎日、ほとんどの時間、身に付けるヒジャブに合う洋服を作りたい」という発想からは、「ともすると、民族的なテイストが強いクリエイションが生まれるのでは?」と想像してしまう。でも、彼女の生み出す洋服からは、それにあたるものが微塵も感じられなかった。ヒジャブを取り入れた斬新なスタイリングは、洗練されていて、モダンそのもの。顔や手といった部分以外の一切の肌を隠すことで、逆に女性の色気を惹き出すパワーを持つコレクションは、気品とは何かをそっと教えてくれる。
ETU BY RESTU ANGGRAINI(エトゥ バイ レストゥ アングライニ) 公式サイト
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