Editor’s Eye
2017.03.22
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- 「わが永遠の魂」の内覧会より。草間彌生さん
草間彌生 過去最大級の個展『わが永遠の魂』がスタート!
世界のKUSAMAの魅力と威力に迫る(前編)
さあ、闘いは無限だ
もっと独創的な作品をたくさんつくりたい
その事を考える眠れない夜
創作の思いは未知の神秘への憧れだった
私は前衛芸術家として宇宙の果てまでも闘いたい
倒れてしまうまで
これは、国立新美術館で『わが永遠の魂』を開催するにあたって、草間彌生さんが世界の人々に向けたメッセージの一節だ。この言葉に触れただけで私の胸は高鳴った。いち画家として、崇敬する人の芸術世界に足を踏み入れることには、いつも怖さが伴う。だが今回は、好奇心の方が圧倒的に強かった。
不勉強な私は、草間さんのスタジオが真裏にあることを知らずに、今の家に引っ越してきた。道ばたでご本人にお目にかかる機会が何度もあったが、なぜかそれはいつも徹夜明けの早朝で、朦朧とした頭では夢としか思えずにいた。リアルだと知ったのは、つい昨年。いつか取材させていただきたい-念願叶って、2月21日、開幕に先駆けて行われた内覧会に伺った。この時ほど、報道・メディア陣が熱狂する姿を私は他に見たことがない。「先生!」「草間さん~!!」とあちこちから悲鳴にも似た声が上がり、その度に何百ものシャッターが切られていく。その間、「ありがとう。みんな来てくれてありがとう、ありがとう、ありがとう…」と言い続ける草間さんの生声が、最前列にいた私には聞こえた。
日本が、世界が、『前衛芸術家・草間彌生』を愛してやまない理由とはー。本展の魅力をご紹介しつつ、考えてみたい。
展示風景より。連作≪わが永遠の魂≫シリーズ
「20世紀の草間彌生」と「21世紀の草間彌生」が六本木に大集結
この展覧会がこれまでの草間さんの個展と違う点は、21世紀に入ってからの近作が中心の第Ⅰ部と、それ以前の20世紀の作品群を紹介する第Ⅱ部に大きく分かれていること。つまり、デビュー以来70年以上、第一線を走り続けてきた草間さんの近作展と回顧展を一度に鑑賞できることにある。
絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンス、映像、ファッション、小説、詩、コラージュなど、多様な分野の作品270点が展示されている。どの作品にも、強烈なエネルギーを感じたが、最も圧巻だったのは、草間さんが現在進行形で精力的に取り組んでいるという、大画面の絵画連作≪わが永遠の魂≫だ。
展示風景より。連作≪わが永遠の魂≫シリーズ
ほとばしる生命力、私の生きざま
2009年、連作がスタートした当初は、100号(F100号162x130cm、S100号162×162cm)も描かれていたが、現在ではS120号(194×194cm)のキャンバスにほぼ統一、2017年2月現在で、総数500点以上に達しているという。
その中から選ばれた132作品が、国立新美術館の大展示室の壁を隙間なく埋め尽くす。アクリル絵の具のビビッドな色彩。水玉、目、人の横顔の反復。細胞や太陽や宇宙を想起させるモチーフの数々。
「芸術家として、毎日生命の尊さを祈り続けながら作品を作り続けてきた」とご本人は語っているが、私が感じたのは、それらの作品から放たれる「作家・草間彌生」のほとばしる生命力そのものだった。観る者をとたんに作品世界に没入させ、心を掴んで離さない。
現に、昨年、文化勲章を受賞された際、草間さんはこのように語っている。
文化勲章受賞時の映像
連作≪わが永遠の魂≫は、連作のかたわら他の作品制作も行い、基本的に週末にはスタジオに行かないことを踏まえると、2~3日ほどで一作品という猛スピードで描き上げていることになる。さらに下書きや下絵が描かれることなく、何の迷いもなくいきなり描き始められ、完成するまでひたすら描き続けられるという。
創作意欲はとどまるどころか、いっそう加速していることが、熱を持って伝わってくる超大作。まさに、ご本人がおっしゃる“生き様”を体現している作品だ。
後編は、草間彌生ワールドをもっと掘り下げていく。
<展覧会情報>
会期:2017年2月22日(水)〜5月22日(月)
休館日:毎週火曜日 ※ただし5月2日は開館
開館時間:10:00〜18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館
会場:国立新美術館
http://kusama2017.jp/