Editor’s Eye
2018.02.21
- Editor’s Eye
日本ミニシアター界の最重要人物!
アップリンク代表・浅井隆が仕掛ける映画の未来
奥渋谷で映画の配給と映画館を運営し、87年の創立時からおよそ30年以上に渡り世界中の多様なインディーズ作品を日本のファンに届けてきたアップリンク。昨年末、2018年に「アップリンク吉祥寺」をオープンするとのニュースが、全国のカルチャーファンの間を駆け巡った。なぜ今、ミニシアター・コンプレックス2号店を吉祥寺に作るのか。寺山修司主催の演劇実験室「天井桟敷」で舞台監督を務めた70年代をキャリアの基盤とし、映画を生業として生涯情熱を注ぎ続ける代表の浅井隆氏に、その想いを聞くことができた。
アップリンク吉祥寺は、渋谷よりも人が集まるかもしれない
ー5年ほど前から「アップリンク吉祥寺」の構想があり、場所探しをされていたとのことですが、具体的にはどういった経緯でオープンにまで至ったのでしょうか。
正確にいうと10年位前から、吉祥寺には映画館のマーケットがあるということはわかっていた。当時の吉祥寺バウスシアターは最初は1スクリーンだったけど、最終的に3スクリーンで作品が上映されていて、閉業間際はわりとメジャー系の作品をやっていた。僕ら(アップリンク)のようなミニシアター系の作品の入る枠が限られてしまって、バウスシアターでアップリンクの配給作品が上映できないこともあったんだ。そういう理由もあり、吉祥寺には映画館を作りたいと思って、ずっと物件を探していた。だけど吉祥寺は地主のほとんどがお寺、という特殊な街ということもあり、借地の上に建っているビルばかりなので、なかなか良い物件に出会えなくてね。そうこうしているうちにバウスシアターが閉業して。この2年くらいはパルコとの共同運営の可能性を探りながら、別の物件でも話を進めていたんだが、最終的にここ半年くらいでパルコとの線で話が一気に進んだんだ。
ー上京して最初に住まれたのが西荻窪でいらっしゃるんですよね。吉祥寺は隣の駅ですが、このあたりの地域への思い入れはあるのでしょうか。
そうだね。アップリンクの最初の配給作品、デレク・ジャーマン監督の『エンジェリック・カンヴァセーション』をバウスシアターで上映してアップリンクが立ち上がったので、そういう意味ではアップリンク発祥の地ともいえなくはないね。
ーアップリンク吉祥寺では地域の方が楽しめるファミリー向け作品の上映も予定されてます。吉祥寺では、どんなお客さんが来ることが期待されますか?
例えば子育て中のお母さんが、午前中に家事をして、渋谷や新宿、銀座の映画館まで行くのは、時間的にも気持ち的にもちょっとハードルが高い。吉祥寺だったら駅から数分のところで生活しているお母さんたちが、学校に子どもを送り出したあと、家事をして、午後ちょっと映画を観るパターンは想像できるよね。年配の人たちは朝散歩しがてら一本観ようとか。吉祥寺に住んでいる会社員は、仕事終わりに夕食を済ませたあと、レイトショーを観るとか、金曜日の夜に一本観るとか。そういうライフスタイルを組める。
都心の映画館とは違って、生活の中に映画を組み込む時間を作ってもらえるだろうなと思って。週末は週末で井の頭公園があったり、個人経営の洒落たカフェや雑貨屋、古着屋なんかが多いからプチ観光地として吉祥寺に遊びにきて、帰りにカフェに寄る、という人たちがいる。ビジネスとしては、都心よりポテンシャルがあるかもしれないと期待してるんだ。
ー確かに。自分の住んでいる街にミニシアターがあったら合間に行こうかな、という気になりますね。
都心の新宿、銀座、有楽町、池袋といったターミナルの駅にある映画館は人口は多いし人は出てきやすいけど、平日と週末の集客に倍くらい差があって、週末が平日の倍くらいになる。吉祥寺を観察していると、平日に時間がある人たちがわんさかいて、平日の集客が半分にならないと見込んでる。蓋を開けてみないとわからないんだけどね。