2017.08.08
親友との飲みの最中、今回の特集“渋い東京”にはまる面白い情報はないものかと話していると、「浮世絵にストリートカルチャーを落とし込むスケーターがいる」とナイスな情報を投げかけてくれた。
翌日、その彼をリサーチ、そしてその作品を目にして自らの口から出た最初の言葉は「渋い…」。しかも東京在住!まさに今回の企画にぴったりではないか。ということで、早速スケーター浮世絵師 “NAGA”氏にアポを取り取材を敢行した。
ストリートカルチャー×浮世絵という独自のスタイルを確立したNAGA氏
1940年代頃のアメリカにて自然発生的に発祥したと言われている、NAGA氏のライフスタイルでもあるスケートボード。そこから約80年の時を経て、遂には、2020年に開催される東京オリンピックの正式種目になるまでに成長を遂げたストリートカルチャーの代表格である。そこでまず、スケーター浮世絵師としての全てのルーツであるスケートボードを始めたきっかけから話を伺った。
「二十歳の時にバイト先の仲間とスケートボードを始めました。しかし一緒に始めた仲間が2、3ヶ月で辞めてしまい、実はそのタイミングで自分も一度やめてしまったんです(笑)。その後、25歳の時に駒込にある銭湯で働き始めたんですけど、銭湯って風呂の仕込みが終わってから番台に座るまで結構空き時間があるんですね。その時間を有効に使いたいなと思い、またスケボーを始めました。そこからはライフスタイルとしてどっぷりはまりましたね」。
なるほど、ストリートカルチャーであるスケートボードとの出会いは分かったが、浮世絵にはどのようなタイミングで興味を持ったのだろうか。
「銭湯で一緒に働いていた先輩が、お風呂に使用している地下水を利用して、ウォーターサーバーの仕事を始めたいと計画しだし、その広告を浮世絵で表現していきたいということになったんです。もともとイラストは好きで描いていたので、じゃあやってみようということになり、そこで始めて浮世絵に触れました。その時は富士山の浮世絵をサンプルにして、頂上に水のタンクが刺さっていたりとか、水がてっぺんから吹き出ているといった感じで描いたのが始まりです。それまでは漫画家を目指していたのですが、それを機に浮世絵へと一気に傾倒していき、それからは何か題材を見つけサンプリングし、イメージを膨らませて一枚のイラストを完成させることがすごく楽しくなりました。そこに自分が好きなストリートの文化をミックスできないかと考え今のスタイルへと辿り着いたわけです」。
唯一無二と言ってもいいNAGA氏の浮世絵スタイルだが、作品を制作するにあたり、作品に反映するインスピレーションは、日常のどのような場面から感じているのだろうか。
「実はとくに意識はしてないかもです(笑)。言うならば、スケートボードに代表する、自分が好きなストリートの文化に関する情報を常に色々と吸収して、それが上手いタイミングで浮世絵の本を見ている時に、そういえばこないだのあれを組み合わせたら面白そうだなという瞬間的なひらめきで作品を作っていきます。ただ、あんまり有名すぎる作品をベースにするとつまらなかったりするので、サンプルにする作品選びには気を使っていますね。ポイントとしては、浮世絵好きな方から見ても、「おぉ」と言ってもらえるように考えて制作しているところです。まんまを使うというよりかは、作品の一部を落とし込むという手法が僕の作品の特徴かもしれません」。
Hip Hopグループ “A Tribe Called Quest”の名盤を見事にサンプリング