第70回ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』
2014.08.07
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第70回という節目のベネチア国際映画祭で、ドキュメンタリー作品として初となる金獅子賞を受賞した『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』。8月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開される。首都ローマから少し外れたところで生きる愛すべき人たちの物語が叙情的に、ときにユーモラスに描かれる。
少し変わった人たちの人生にスポットライトを当てるロージ監督
大都市ローマを取り巻き、全長約70キロメートルにもわたるという“大動脈”高速道路GRA。その周辺で懸命に生きる少し変わった人たちの人生にスポットライトを当てた『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』。ベネチア国際映画祭で絶賛された作品が日本でも公開される。
現代イタリア文学を代表する作家イタロ・カルヴィーノの幻想小説『見えない都市』にインスパイアされた本作。マルコ・ポーロが奇妙な55都市についてフビライ・ハンに語るというストーリーに触発され、市井の名もなき人びとに寄り添い、切り取られた物語はドキュメンタリーでありながら、その枠組みを超えた野心作でもある。
そんな出色の作品を生み出したのは、これまでメキシコの麻薬カルテルの元暗殺者のインタビューを映画化した「El sicario-Room 164」(原題)で、ベネチア国際映画祭の国際批評家賞に輝くなど、数々のドキュメンタリー作品を手がけてきたジャンフランコ・ロージ監督。登場人物の人生の断片をつうじて高速道路GRAを辿るという、まるでモザイクのような作品を完成させた。
高速道路GRA周辺で懸命に生きる愛すべき人たち
1日の交通量16万台、大都市ローマを取り巻く高速道路GRA。その周辺には旅行者たちが知らない愛すべき人たちの暮らしがある。
木のなかの「音」の世界を研究しつづける植物学者。ブルジョアを装い、偽りのいまを生きる没落貴婦人。不釣合いなモダンな建物に移り住み、あてもなくおしゃべりしながら暮らす老紳士とその娘。毎晩のように事故現場で人命救助をおこない、合間を縫って年老いた母親の面倒をみる救急隊員。伝統を守りつつ、後継者がいないことを憂うウナギ漁師。
スポットライトを浴びることもなく懸命に生きる彼ら。その風景のなかを覗いてみると見えてくる喜び、怒り、悲しみ、そして夢──。ドキュメンタリーでありながら、詩的な魅力にあふれる“物語”は、あたらしいドキュメンタリーのスタイルを私たちに提示している。
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』
8月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
監督・撮影・音響│ジャンフランコ・ロージ
配給│シンカ
2013年/イタリア、フランス/93分
http://www.roma-movie.com
OPENERSより
MOVIE|昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞
http://openers.jp/culture/tips_movie/news_roma_47054.html