第65回ベルリン国際映画祭
注目の受賞作品を一挙紹介!
2015.02.18
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2月5日(木)から11日間、ドイツ・ベルリンを舞台に開かれている第65回ベルリン国際映画祭。映画祭の花形ともいえるコンペティション部門には全19作品が出品。
テレンス・マリックやヴェルナー・ヘルツォーク、ピーター・グリーナウェイといった巨匠たちの作品が並ぶ一方で、ベトナムやルーマニアなど、近年勢いのある新興国から飛び出した新鋭監督の顔ぶれも目立つ。
日本の映画ファンにとっては、SABU監督の『天の茶助』、菊地凛子出演の『Nobody Wants the Night』など、日本勢の行方も気になるところ。それらを“厳しい目”で評するのは、審査委員長を務める『レスラー』『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督ほか、『殺人の追憶』『スノーピアサー』のポン・ジュノ監督、俳優のダニエル・ブリュール、オドレイ・トトゥら総勢7人の審査員たち。2月14日夜(日本時間15日未明)に発表された注目の受賞結果を、早速見ていくことにしよう。
金熊賞
『Taxi』
製作国:イラン
監督:ジャファル・パナヒ(Jafar Panahi)
審査員の心を突き動かしたのは、映画から溢れ出る「愛」
制約というのは映画人にとってやっかいな存在だ。制約があることで、これまでにないアイデアが生まれる可能性もあるが、本来やりたかったことが実現できなかったり、創作意欲を削がれることの方が圧倒的に多いだろう。だが、イラン出身の社会派監督、ジャファール・パナヒにとって制約は避けられないもの。イランのネオレアリズモ(ファシズムへの抵抗として生まれた、リアリズムの手法で現実を描写する芸術表現)とも評されるその内容から、これまでに手がけた7作品のうち、処女作『白い風船』以外はすべてイランで上映禁止となっている。また、過去に2回投獄されており、釈放されたいまも映画づくりに関する一切の活動を禁止されているほか、国外へ出ることさえ許されていない。
そんな不自由な身であっても、パナヒは決して映画づくりを諦めない。むしろ課せられた制約を逆手にとって、そのなかでできるあたらしい手法を模索しつづけている。今回の出品作品『Taxi』でも、監督自らタクシーを運転しながらカメラを回すという大胆な撮影スタイルに挑んでみせた。イエローキャブとカメラが映し出すイラン社会のいま。壇上にあがった審査委員長のダーレン・アロノフスキー監督は、次のような賞賛とともに『Taxi』の名を読み上げた。「ジャファール・パナヒは自らの不自由さを嘆き、怒る代わりに、映画界へのラブレターともいうべき作品を作り上げました。ここには映画、観客、そしてイランに対する彼の溢れんばかりの愛情が詰まっている」