Editor’s Eye
2020.02.05
- Editor’s Eye
Queerとは何かを深く考えるドキュメンタリー映画
キミは『QUEER JAPAN』を観たか?
最近ではチラホラと耳にする機会があると思うQueer=クィア。LGBTQやLGBTQ+などと使われることが多い。正確に訳すことは甚だ難しいのだが、ゲイやレズビアンに対する差別用語を彼らが逆手にとって、自分たちのカルチャーの総称のように使うようになったという説明を散見する。ただ、こう言った規定以上に、Queerはもっと自由で、ある意味で変態性を持ち、よりクリエイティブなものなんじゃないか?
多分、この映画の出発点はそこにあったのではないかとさえ思う。
監督・編集 グレアム・コルビーンズさん
「グレアム・コルビーンズ (監督・編集)が、自分で企画したドキュメンタリーを日本で撮影したいと考えて、日本のローカルのプロデューサーが必要だということで、連絡がきました。それも私が前に制作したショートフィルムのクレジットで名前を見つけ、ネットで探してツイッターで連絡という、唐突な出会いがスタートでした。」
そう語るのは、このドキュメンタリー映画のプロデューサーの一人である、飯田ひろみさんだ。彼女自身数多くの海外プロダクションの日本撮影のコーディネートやプロデュースを行うその道のプロだ。
プロデューサー 飯田ひろみさん
「インタビュー自体は100人以上に行われたし、撮影も5ヶ月かけてその時点でクラウドファンディングの予算を使い切ってしまいました。そこからポスプロや編集にさらに時間がかかるという、気が遠くなるような作業をグレアムはめげずにやりきったわけです」
ここに登場するQueerな人々は監督自身の眼が選び出した人々だが、誰もが現状に満足しているだけでもなく、もっと自由へと向かって戦っているかのように感じてしまう。それは、我々自身、誰もがQueerな部分を内包しつつ、どこかで社会と折り合いをつけながら生きていかなければならない。そんな呪縛の中で生活しているからに他ならないのでは。
Queer自体をLGBTQの世界から切り離して、本来の意味である「風変わり」であったり「奇妙」や「不思議」と解釈すれば、誰にもQueerは内在するのだろう。
この映画に登場する数多くのQueerたち(と言って規定するわけではないが)、ヴィヴィアン佐藤、松田篤史、畑野とまと、のぎすみこ、田亀源五郎、ハスラーアキラ、長谷川博史、小川チガ、杉山文野、レスリー・キー、マサキチトセ、サエボーグ、三橋順子、上川あや、マーガレット、マダム ボンジュール・ジャンジ、青山薫、大河りりぃ、鬼塚哲郎、シモーヌ深雪、砂川秀樹などなど。それぞれに独自の世界を切り開いている人々だ。
「ここには日本の裏ポップカルチャーがあるとも言えますね」
飯田さんの言葉通りだと思う。
ドキュメンタリーである以上にそれぞれの生き方がドラマティックだし、そこから見えてくるQueerの世界の一端を知ること。それは今という時代の社会がどう進んでいくかを考える重要なテーゼを直感することになるだろう。
そのことを実証するかのように、このドキュメンタリー映画が、2/7-11に開催される「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」にて、コンペティション部門の入賞と上映が決まったのだという。おめでとう!
“QUEER JAPAN”。それは自分たちのすぐそばにある、もう一つの自由を知ることになるかもしれない。
ぜひ見て欲しい一本だ。
©2019 QUEER JAPAN
<映画祭上映情報>
『座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル』
*コンペティション部門入選 | 2月11日(火・祝)11:41〜上映
会場:座・高円寺2(杉並区立杉並芸術会館)
[杉並区高円寺北2-1-2 地下2階]
URL:http://zkdf.net/
ドキュメンタリーの魅力と可能性を再発見する映画祭。
<映画概要>
『クィア・ジャパン』
監督・編集:グレアム・コルビーンズ
出演:ヴィヴィアン佐藤、松田篤史、畑野とまと、のぎすみこ、田亀源五郎、ハスラーアキラ、長谷川博史、小川チガ、杉山文野、レスリー・キー、マサキチトセ、サエボーグ、三橋順子、上川あや、マーガレット、マダム ボンジュール・ジャンジ、青山薫、大河りりぃ、鬼塚哲郎、シモーヌ深雪、砂川秀樹 ほか
プロデューサー:飯田ひろみ
共同プロデューサー:石井アン
撮影:ジョン・ローニー、グレアム・コルビーンズ
写真:竹之内祐幸、ジョン・ローニー
翻訳:ジョセリン・アレン
音楽:Geotic
制作:HIROMEDIA8
ウェブサイト:http://www.queerjapanmovie.com