被害者側から大虐殺を見つめ返すドキュメンタリー
『ルック・オブ・サイレンス』
2015.07.04
- CLIPPING
- © Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014
インドネシアで1960年代に起こった100万人規模の大虐殺を、被害者の弟である眼鏡技師の青年の目をとおして見つめるジョシュア・オッペンハイマー監督によるドキュメンタリー『ルック・オブ・サイレンス』。7月4日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショーされる。
青年アディの静かな眼差しで大虐殺に隠された“責任なき悪”に迫る
ベルリン国際映画祭で2部門に輝くなど、全世界で70以上の受賞を果たした前作『アクト・オブ・キリング』で、インドネシアの虐殺の実行犯たちが罪の意識をもつこともなく、嬉々として自分の殺人を再現して映画をつくるという前代未聞の手法でその残虐性をあぶりだしたジョシュア・オッペンハイマー監督。
今度は被害者側からの視点で生み出された新作『ルック・オブ・サイレンス』では、大虐殺で殺害された兄をもつ青年アディが静かな眼差しと、驚きの手法で虐殺の実行犯たちと対峙。大虐殺に隠された“責任なき悪”を浮かび上がらせることに成功した。
『ルック・オブ・サイレンス』はすでに世界が評価。昨年のベネチア国際映画祭では、コンペティション部門の審査員大賞など5部門を受賞。本国インドネシアでも社会を動かすほど、大きな話題を呼んだ作品が満を持して日本でも公開される。
半世紀にもわたり沈黙を強いられた母と子の想い
2003年、ジョシュア・オッペンハイマー監督に出会ったアディは、監督が撮影したかつての加害者たちが、自らの虐殺を誇らしげに語る映像に強い衝撃を受ける。加害者たちは現在も権力をもち、楽しげに暮らすいっぽうで、アディの母は無念の死を遂げた兄を想い悲しみから抜け出せずにいた。さらに、被害者であるアディ一家はいまだに近くに住む加害者たちに怯え、沈黙を強いられている現状が50年近い年月を経てもなお、そこにはあった。
そんな状況を打破しようと、アディは2012年に監督に再会すると「兄を殺した加害者たちに直接会って、責任を問いたい」と提案する。
眼鏡技師という職業を生かし、加害者たちに「無料の視力検査」をおこなうことで彼らの警戒を和らげると、静かに視力を測りながら、次第に核心をついた質問を投げかけてゆくアディ。しかし、そこで目の当たりにしたのは、加害者の誰もが虐殺を自分の責任ととらえていない事実だった。
「ただ指示されただけ」「この村で生きていたければ、もう何も言うな」・・・・・・そんな言葉を投げかけられるアディの思慮深い瞳には何が映るのか。半世紀にもわたり沈黙を強いられた母と子の想いがスクリーンからあふれ出す。
『ルック・オブ・サイレンス』
7月4日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
※前作『アクト・オブ・キリング 劇場版』も7月4日(土)より緊急レイトショー決定
監督|ジョシュア・オッペンハイマー
配給|トランスフォーマー
2014年/デンマーク・インドネシア・ノルウェー・フィンランド・イギリス/103分
http://www.los-movie.com
OPENERSより
『アクト・オブ・キリング』のジョシュア・オッペンハイマーがふたたび問う|MOVIE
http://openers.jp/article/1303062