恋愛映画の名手が綴る
極上のメロドラマ『暮れ逢い』
2014.12.22
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- © 2014 FIDELITE FILMS – WILD BUNCH – SCOPE PICTURES
男女の心の機微を繊細に描いた『髪結いの亭主』『仕立て屋の恋』など、フランスを代表する恋愛映画の名手として知られるパトリス・ルコント監督。最新作となる『暮れ逢い』が、12月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほかで公開される。
許されぬ恋に落ちたふたりに響きわたる、
切ない愛のソナタ
愛し合う男女のあいだに湧き上がる微妙な感情を、フェティシズムたっぷりにスクリーンに映し出すパトリス・ルコント監督。『髪結いの亭主』『仕立て屋の恋』『イヴォンヌの香り』など、自身の初期作品を彷彿とさせる、原点回帰ともいうべき大人の純愛映画『暮れ逢い』が公開される。
本作はウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』のモデルともなった作家、シュテファン・ツヴァイクの短編小説の映画化であり、ツヴァイクから時代を超えて投げかけられた「惹かれあう恋人たちの欲望は、時の経過に打ち勝てるものなのか」という問いに、ルコント監督が本領発揮で挑んだ意欲作だ。
舞台は1912年のドイツ、初老の実業家ホフマイスターの屋敷に、秘書として若く才覚あふれる美しい青年フリドリックがやってくる。道ならぬ恋と知りつつも、ホフマイスターの若き妻ロットとフリドリックは次第に惹かれあうが、触れ合うことはもちろん、愛を伝えることすらできずに想いを募らせる。
突然の転勤によって引き離されることになったフリドリックとロットは、互いに初めて素直な気持ちを打ち明け、再会するまで変わらぬ愛を誓おうと約束を交わす。しかし、まもなく訪れた第一次世界大戦によって彼らの運命は大きく揺れ動いてゆく──。
裕福でやさしい夫と息子に恵まれながらも、心の奥底の孤独と喪失感がぬぐえない人妻ロットに扮するのは、『それでも恋するバルセロナ』のレベッカ・ホール。『ハリー・ポッター』でおなじみのアラン・リックマンが、実業家ホフマイスターをいぶし銀の演技で体現するほか、野性味を感じさせるリチャード・マッデンが、激しい想いに苦悩する貧しくも知的な青年フリドリックを憂いたっぷりに演じている。
印象に残るのは、ガブリエル・ヤレドが手がける静謐なメロディの数かず。劇中でロットが奏でるベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調「悲愴」とともに、甘美で切ない旋律が深い余韻を醸し出す。
さらに、1900年代初頭の上流社会の華やかな暮らしを再現した衣装や、豪華な調度品がスクリーンに重厚感を持たせ、若妻ロットが身にまとう香水ゲランの「ルール ブルー」が、ふたりの愛の行方に彩りを添えている。
激動する時代の波に翻弄された男女の8年間にわたる“純愛”を、パトリス・ルコント監督が気高くも官能的に綴った映画『暮れ逢い』。ふたりが幾度となく無言で交わすまなざしのエロティシズムに酔いしれたい。
『暮れ逢い』
12月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
監督|パトリス・ルコント
出演|レベッカ・ホール、アラン・リックマン、リチャード・マッデン
原作|シュテファン・ツヴァイク
配給|コムストック・グループ
2014年/フランス・ベルギー/98分/原題:A Promise
http://www.kure-ai.com/
OPENERSより
MOVIE|恋愛映画の名手が綴る極上のメロドラマ
http://openers.jp/culture/tips_movie/news_kureai_50348.html